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肩関節周囲炎について

2021/07/17

肩関節周囲炎とは

 肩関節周囲炎とは、肩関節の痛みと運動障害を主徴とする症候群のことを言います。

年齢的要因はありませんが、中年以降(50代を中心とする40代〜60代)に発症しやすく、

いわゆる「五十肩」のことを言います。

ちなみに、この年代の2.5%くらいの方が肩関節周囲炎になると言われています。

 

発症機転は?

 発症機転は、全く原因の無いもの、動作中に初めて痛みを感じたもの、外傷など様々ですが、患者様本人に強く印象が残るエピソードがない場合が多いです。

そのため、なんとなく痛みを感じ、徐々に強い運動時痛に変化していく事もあります。

中には、そのまま痛みが落ち着く場合もあります。

しかし、痛みのあるまま放置すると関節可動域が低下し日常生活に支障をきたす場合もあります。そのため1週間程度を目安に痛みが続く場合は整形外科を受診しましょう。

 

原因は?

 はっきりした原因は分かっていませんが、肩関節を構成する組織(骨・軟骨・靭帯・腱など)が退行変性(老化)し、炎症が起きるといわれています。

 

病期別特徴(症状)は?

 肩関節周囲炎は大きく3つの病期(症状)に分類されますが明確に区別することは困難です。

 

・急性期(強い痛みを主症状とする時期)

 2〜3週から2〜3ヶ月続く。運動時の痛みだけでなく、安静時の痛みや夜間痛も出現しわずかな刺激でも痛みを感じる時期です。痛みを感じる部位は一般的に上腕(肩から肘関節まで)の外側に認めることが多いです。

 

・慢性期(拘縮が完成する時期)

 6ヵ月から1年続く。急性期の痛みは軽減し拘縮(肩関節の組織が硬くなってしまう事)が著明になる時期です。

 

・回復期(拘縮が寛解する時期)

 痛みが徐々に寛解し関節の動きが徐々に改善してきます。そのため患者様は日常生活上の不便を感じなくなってきます。

※予後

 一般的には半年から約1年前後で痛みや肩の動く範囲がほぼ元の状態に回復すると言われています。しかし、強い痛みが残る場合は他の肩関節の病気や頚椎からの影響、内臓が原因の関連痛などが考えられます。

 

肩関節周囲炎の治療は?

 肩関節周囲炎は痛み止めなどの薬物療法や生活上の注意、そしてリハビリテーションで治癒するので、手術が必要になる場合は多くありません。放っておいても治癒する可能性も高いです。しかし、放っておいて後々関節の拘縮が著明に出現した場合は手術の可能性も考えられます。早期に受診しリハビリテーションを実施しましょう。

 肩関節周囲炎の治療は痛みの寛解と関節可動域の改善が大きな目標です。

先ほどの病期に併せて実施していきます。

 

・急性期(強い痛みを主症状とする時期)

 痛みが強い時期です。この時期は痛みを感じないようにすることが最優先で肩関節を安静にします。この時期では痛み止めの薬や、痛み止めの注射が効果的です。日常生活上で重たい物を持たないようにしましょう。

 具体的には、就寝時の肩関節のポジショニング指導や生活指導を行います。

 

・慢性期(拘縮が完成する時期)から回復期(拘縮が寛解する時期)

 徐々に痛みが減ってくるので、物理療法や運動療法を行っていきます。

 物理療法では、温熱療法のホットパックなどで肩関節を温めて筋肉の緊張をほぐし、血行を良くすることによって症状を改善させます。

 運動療法では、肩関節周囲の筋肉の強化や肩を動かす範囲を少しでも広くするための治療をしていきます。

 今回は痛みの強い時期である急性期に行う夜間時のポジショニングを掲載します。

 

・夜間時痛へのポジショニング

 

 主に炎症期に近い状態に行うこと。

 炎症期は特に痛みが強い状態ですのでエクササイズというよりもどう過ごすか、どう痛みに対して向き合うかです。そのためポジショニングなどについて記載しています。

 整形外科に受診するまでに、また受診してからも参考にしてみてください。

 腕の高さを胴体と同じ高さにするためにクッションかバスタオルを丸めた物を置きます。

脇は体から30°程度開きます。そしてお腹の上にもバスタオルを丸めて置きます。

置くことで肩の内側に捻る動作(内旋)の角度を浅くすることが可能です。

内旋にすることで肩関節内の圧を高まりにくくすることが可能です。

しかし捻りすぎると痛みが出るためバスタオルを置きます。

 

*夜間時痛のメカニズム

 腱板を中心とし関節内に浮腫など生じ、また肩関節内の癒着が起こると肩関節内の循環状態が滞ります。その結果、関節内の内圧は上昇し、一時的に高まった内圧は下降しにくい状態となり夜間時痛が発生すると考えられています。

 また、夜間時就寝時に生じる理由としては、姿勢の影響も考えられています。

座位や立位では腕に作用する重力により牽引され内圧は減少します。しかし、寝ている姿勢は下方への牽引は作用しないため内圧が高くなりやすい状態なのです。

 

トレーニングに関しては、診察で診断をして頂き理学療法士の方とも一緒に実施していく方が安全かつ効率的です。そのため自己判断で実施して状態を悪化させないようにしましょう。 目安としては1週間程度痛みの様子を観察します。

結果的に緩和するどころか悪化する場合は、おかだ整形外科へ受診してみましょう。

                             

                             理学療法士 牧 将平