変形性膝関節症について
2021/08/23
変形性膝関節症とは
体重や加齢などの影響から膝の軟骨がすり減り、膝に強い痛みを生じるようになります。痛みの部位としては、膝関節の内側や膝蓋骨(お皿)付近に多く訴えが見られます。また、可動域制限(膝が伸びない状態)や筋力低下が起き、日常生活活動制限(階段昇降など)が生じます。女性に発生することが多く、加齢、肥満、外傷なども危険因子です。
膝は股関節と足関節の中間関節で体重負担が大きくかかる関節であり、変形性膝関節症の発症を防ぐためには体重のコントロールが重要です。さらに、膝関節周囲の筋力をしっかりと保持することも、膝への負担を軽減させるためには有効です。
※ちなみに…
日本では、退行性変化(老化や肥満など)として考えられてきた一次性関節症が圧倒的に多いです。また肥満との相関も極めて明確となっています。つまり、一次性のものは両側性に二次性のものは外傷などによるため片側性に生じることが多いです。男女比は1:4で女性に多く発症しています。
原因は?
・一次性関節症…加齢による関節軟骨の老化や肥満が原因と考えられています。
・二次性関節症…外傷(脛骨高原骨折など)、関節の炎症や破壊を伴う疾患(関節リウマチ、痛風など)といった様々な疾患に続発すると考えられています。
上記しましたが、日本では一次性関節症が多く老化の過程や肥満により半月板が脆くなり関節軟骨へのストレスで炎症が起き、水が溜まるといった症状や痛みにつながります。
症状は?
症状としては、膝関節を動かしたときに生じる痛みが訴えとして1番多いです。
特に、歩行時の最初の数歩や椅子から立ち上がるときに痛むことが多いです。
病気が進行すると痛みは強くなる傾向にあります。痛みが生じることで自然と関節の可動域も狭くなり、結果、日常生活に大きな影響を及ぼすようになります。
変形性膝関節症では炎症反応が生じ、膝に水がたまる(関節水腫)こともあります。
通常、膝を伸ばすと膝のお皿(膝蓋骨)の形がみえますが、関節水腫になると、膝蓋骨の形が見えなくなります。また、関節水腫は膝の可動域にも影響します。
検査・診断
変形性膝関節症では、病気に関連した膝の痛みなどの症状や、膝のO脚所見、滑膜の炎症反応である関節水腫がみられるかなどを確認します。
まずはレントゲン写真で判断します。レントゲン写真では、関節裂隙の狭小化(膝関節の隙間)、関節周辺の骨棘形成の確認をします。
その後、必要に応じてMRIといった画像検査を行うこともあります。
最新の画像検査を行うことによって、軟骨や半月板、靱帯などの損傷具合などをより詳細に評価し確認します。
治療は?
治療は基本的に保存療法(リハビリテーション、内服、装具療法)に努めます。
変形性膝関節症の発症要因を可及的に除去することを目指します。しかしながら、1年以上積極的な運動療法や薬物投与、装具療法を行っても症状が不変あるいは増悪した場合は、観血的治療も検討されます。観血的アプローチとしては以下の2つになります。
・残された膝関節の機能を最大限活用させるための手術
・人工関節に置き換える手術
具体的な外科的治療法には、主に3つの手術があります。
膝に与える影響が小さいものから順番に並べると、以下のようになります。
関節鏡による手術、膝周囲骨切り術、人工膝関節手術
- 関節鏡による手術
関節鏡とは、膝の周囲に内視鏡を入れ、膝の内部をきれいにする手術です。
膝の内部の掃除と半月板の修復を目的としています。
- 膝周囲骨切り術
一般的に高位脛骨骨切り術がよく行われています。内反(O脚)、外反(X脚)変形を伴うときに変形を矯正し、荷重面を均等化する目的で行われる。成績は良好ですが、免荷期間が長期に及ぶため高齢者には向かないとされています。
- 人工膝関節手術
人工股関節とともに日本で行われている人工関節手術のなかで最も多く、60〜70歳代の高齢者に対して行われています。
リハビリテーション
具体的なリハビリテーションは、物理療法や運動療法などあります。それらと内服やヒアルロン酸の注入を疼痛の状態に合わせて色々組み合わせて行います。
今回は具体的な運動療法を2つ紹介します。
・SLR運動
両足を伸ばした状態で床に座ります。もしくはその姿勢が厳しい場合は仰向けに寝ます。その状態で、膝をしっかりと伸ばし10㎝程度上げます。上げる足はしっかりと力を入れます。
回数は20回程度を痛みに応じて2セット程度行います。
・レッグエクステンション
椅子に座ります。背筋を伸ばして背中は反りすぎず、丸くなりすぎない状態を作ります。そして鍛えたい方の足を伸ばします。その際、伸ばしている足の太ももの裏は椅子につけておきましょう。反対側の足も地面につけておきましょう。
回数は痛みのない場合は20回を目安に2セット程度行いましょう。伸ばした足は5秒程度伸ばし続けます。
上記2つの運動は太もも前の大腿四頭筋(大腿直筋、中間広筋、内側広筋、外側広筋)という筋肉を鍛えます。膝関節を伸ばす筋肉です。
膝関節はしっかりと伸びて体重を支えるため安定します。変形性膝関節症の場合、どうしても変形が強く伸びにくい場合もあります。しかし上記運動をすることでしっかりと大腿四頭筋(特に内側広筋)をトレーニングします。
また、体重コントロールは必須です。無理のない範囲で有酸素運動や食事内容の変更を行い、ご自身の体格にあった体重へ減量してみましょう。
最後に…
痛みがある際は無理せず、おかだ整形外科へ受診してください。
上記トレーニング以外にも理学療法士のスタッフが様々なリハビリテーションを実施いたします。そして極力手術をせずに保存療法で痛みの緩和を図りましょう!
理学療法士 牧 将平