変形性股関節症について
2021/09/12
変形性股関節症とは
変形股性関節症は、股関節を構成する骨(骨盤、大腿骨)や関節軟骨に不具合が生じることで関節軟骨の減少、骨の変形を来す病気です。
特にみられる症状としては、疼痛や可動域制限、跛行、関節拘縮、脚短縮、筋力低下、日常生活活動制限などです。病気が進行するにつれ、これらの障害が重度となる傾向にあります。特に股関節痛(多くは鼠径部痛から始まる)は主訴となるもので、疼痛の持続による活動量の低下や不眠などの睡眠障害に陥る可能性があるため、最も重大な問題です。
さらに、股関節の変形や拘縮、脚短縮などが起こることで腰部や膝関節などの隣接関節にも生じる疼痛の訴えはよく聞かれます。
原因は?
股関節は骨盤(寛骨臼)と、大腿骨(骨頭)が組み合わさって構成されています。
発育時の股関節のかみ合わせが悪かったり、脱臼したり、加齢によって関節軟骨がすり減ると股関節のスムーズな動作が障害を受けて変形性股関節症が生じます。
・一次性股関節症…
加齢による関節軟骨の脆弱化や肥満、関節軟骨内物質の質的変化、遺伝的要素、ホルモンなどが原因と考えられています。しかし、原因は明らかとはされていません。
・二次性股関節症…
日本では、大半を占めているのが二次性で多くは先天性股関節脱臼や臼蓋形成不全に由来するものが多いです。
※ちなみに…
上記しましたが、日本では欧米と異なり一次性股関節症はまれで二次性股関節症がほとんどです(全股関節症の約80%)。女性に多い非炎症性の進行性疾患です。しかし、現在、日本では高齢化が進み、糖尿病(肥満)も頻度が欧米並みなっており、今後いわゆる一次性股関節症が増加する可能性があるとも言われております。
病気分類(検査・診断)
変形性股関節の病態の進行度を表す病気分類はX線学的(レントゲン)に前股関節症、初期股関節症、進行期股関節症、末期股関節症の4期に分類され、治療方針の決定などの重要な情報となります。
・前股関節症…
程度は様々ですが長く歩くと疲れやすく(だるさや痛みを含む)、安静にすると治癒するといった症状が特徴的です。15歳〜30歳代に多いとされています。この時期では、著明な可動域制限や筋力低下は認められず、脚短縮もほとんど認められません。
・初期股関節症…
痛みがやや頻回に認められるようになり、なかには軽度の可動域制限や筋力低下をきたす例もあります。また、日常生活も少し傷害されていきます。ただし、この時期も安静により症状が軽快することが多いです。
・進行期股関節症
痛みが強くなり、持続するようになります。また股関節の可動域が制限され日常生活もかなり障害されてきます。
・末期股関節症
痛みが強く、安静時や夜間時にも認められるようになります。関節可動域の制限(拘縮)が強くなり、脚短縮を認められるようになります。
治療は?
・保存療法
発症初期は、痛みを緩和するために副作用の少ない消炎鎮痛剤を使いながら、運動療法(リハビリテーション)を中心とした保存療法を行います。このとき、関節可動域(筋柔軟性など)や筋力増強、姿勢の改善、減量など生活指導が行われます。
・手術療法
変形性股関節症の手術には大きく分けて骨切り術と人工股関節置換術があります。
骨切り術とは…
骨切り術は、関節近くの骨(骨盤もしくは大腿骨)を切り、関節の適合性を高めることで軟骨のすり減りを防ぐ手術です。骨切り術(骨盤骨切り術や大腿骨切り術)のなかでも寛骨臼回転骨切り術という術式が比較的よく選択されます。比較的年齢が若い方が対象となっております。
人工股関節置換術とは…
人工股関節置換術は基本的に、末期股関節症で疼痛が強く、可動域制限及び日常生活動作の制限著しい患者様が適応となります。また、人工関節の耐用年数からも年齢は60歳以上が良いとされていました。しかし、近年では人工関節の耐用年数も向上し、重症な方、特に両側例では50歳代から行われています。
リハビリテーション
リハビリでは、股関節の可動域改善のために股関節周囲の筋肉へのストレッチや股関節周囲筋力への筋力運動を実施します。可動域が狭まると日常生活に支障をきたします。また股関節周囲筋力の筋力低下は、関節の安定性を低下させ関節軟骨への負担が増大します。そのためこの2つはすごく重要となります。その他には減量のために有酸素運動なども重要です。代表的な筋力運動を載せています。
・股関節伸展運動(大殿筋筋力)
うつ伏せ(伏臥位)となります。骨盤の下にタオルを入れます。そして膝を伸ばすもしくは膝を曲げて20回程度行います。注意点は腰を反りすぎないことです。お腹に力を入れて実施しましょう。
*膝を伸ばす場合…
大殿筋とハムストリングス(太もも裏の筋肉)が鍛えることができます。
*膝を曲げる場合…
大殿筋を主に鍛えることができます。
・股関節内転運動(内転筋群)
仰向け(背臥位)となります。両脚を軽度開き、間にボール(クッションなど)を挟みます。同じくお腹に力を入れながら両脚を閉じます。20回程度行います。
注意点は力を入れる際に息を止めないことです。また腰が反らないように注意します。
・股関節外転運動
横向き(側臥位)になります。へそを軽度地面に向けます。写真はチューブを使用していますが無しでも大丈夫です。そのまま、かかとを斜め後ろにあげます。
これも20回程度行います。
注意点は、上側の骨盤が後ろに倒れないようにお腹に力を入れます。回数をこなすと次第に挙げている足が体より前に来ないように注意しましょう。
最後に…
痛みがある際は無理せず、おかだ整形外科へ受診してください。
上記トレーニング以外にも理学療法士のスタッフが様々なリハビリテーションを実施いたします。そして極力手術をせずに保存療法で痛みの緩和を図りましょう!
理学療法士 牧 将平