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ロコモティブシンドロームについて

2021/11/14

ロコモティブシンドロームについて

 ロコモティブシンドローム(以下ロコモ)とは、運動器障害のために移動機能の低下をきたした状態のことを指します。

 

※運動器とは…

 人間が立つ、歩く、作業するといった、広い意味での運動のために必要な身体の仕組み全体のことをいいます。

 

 2007年に日本整形外科学会が提唱した概念であり、英語で移動することを表す「ロコモーション(locomotion)」、移動するための能力があることを表す「ロコモティブ(locomotive)」からつくった言葉で、移動するための能力が不足したり、衰えたりした状態を指します。ロコモとはその略称です。

 

 ロコモ自体は病気ではありませんが、要支援、要介護になる原因のトップは転倒、骨折や関節の病気など運動器の故障であることはあまり知られていません。高齢化が進む日本ではロコモから寝たきりや要介護への移行を予防することに力が注がれるようになっています。

 また、ロコモに該当する高齢者はメタボリックシンドロームなどの生活習慣病を併発しているケースが多いことが分かっています。ロコモによる運動不足が生活習慣病を悪化させるケースもあれば、重度な生活習慣病に起因する身体活動の低下がロコモを悪化させるなど、互いに影響しあって全身の機能低下を引き起こしていることも少なくありません。そのため、ロコモはできるだけ早い段階で発見し、適切なリハビリテーションや治療を行うことが“健康寿命”を伸ばすことに繋がります。

原因

⒈ 骨や関節、筋肉などの整形外科疾患が原因となる場合

 変形性関節症や脊柱管狭窄症、関節リウマチ、骨粗鬆症など関節や骨に異常を引き起こす病気は年齢を重ねるごとに発症率が上昇し、結果的に正常な関節運動ができなくなることで運動機能の低下が生じるとされています。

 

⒉ 筋力やバランス能力など運動能力低下による場合

 正常な身体活動を行うための筋力や関節可動域、バランス能力は加齢に伴って低下していき、それが運動機能の低下を引き起こします。また、運動機能低下は転倒を引き起こします。それが原因でロコモを悪化させるケースも少なくありません。

 

※その他の疾患も原因として挙げられる可能性はあります。

 例えば脳梗塞による麻痺症状、心疾患などの内科的疾患による体力低下によるものなども該当します。またここ近年ではCOVID-19(新型コロナウイルス)による感染で軽度〜中等症の方の治療後も該当されると考えられます。

症状

 整形外科疾患が原因の場合は、その整形外科疾患の症状が出現します。

運動機能の低下が原因の場合は移動距離の低下や介助量の増加などが挙げられます。また、症状が必ずしも出現するとは限りません。

 移動能力の低下、身体活動量の低下によって生活習慣病の症状や認知機能の低下などもロコモの症状と言ってもおかしくはないでしょう。

 

※運動器変性疾患に対する手術とロコモ

 運動器変性疾患である腰部脊柱管狭窄症の患者に対し手術を行い、術前、術後半年、術後1年のロコモ度を縦断的に評価したところ、立ち上がりテストのスコアにおいては術前後で有意差は認められなかったが、2ステップテストとロコモ25においては、それぞれのスコアが術後有意に改善していた。との報告もあります。つまり症状が強く移動能力の低下や移動能力も含めた日常生活能力が低下している場合は手術も1つの方法であると考えられます。

検査、診断

 ロコモの判定は3つのテストからなるロコモ度テストで行います。3つのテストは、“立ち上がりテスト”、“2ステップテスト”、“ロコモ25”からなっています。

これら3つのテストの結果によって判定されます。

 

・立ち上がりテスト

 このテストでは下肢筋力を測定します。

片脚または両脚で座った姿勢から起立できるかによってロコモ度を判定します。

ロコモは移動機能の低下を指します。そのため下肢筋力の低下は移動能力の低下を指すためロコモの可能性があると説明できます。

 

<方法>

 両脚40㎝で初め、可能であった場合は片脚へレベルアップします。この様に台座の高さを30、20、10㎝と下げていき、両脚から片脚へと難易度を変えていきます。

可能であった高さ、両脚か片脚かで判定します。

・2ステップテスト

 このテストでは歩幅からロコモ度を測定します。

歩幅を調べることで、下肢の筋力やバランス能力、柔軟性などを含めた歩行能力を総合的に評価します。

 

<方法>

 スタートラインを決め両脚のつま先を揃えます。そしてできるだけ大股で2歩歩き、両脚を揃えます。(バランスを崩した場合は失敗とし、やりなおします。)

スタートラインから着地点(つま先)までの距離を測定します。2回実施し、成績が良好だった方を採用します。歩幅を身長で除して出てきた値でロコモ度を測定します。

・ロコモ25

 このテストでは、身体の状態や生活状況からロコモ度を測定します。25個の質問に答えてロコモ度を測定します。

 

<方法>

 下記URLで質問表をご覧下さい。

・ロコモ度

1) ロコモ度1

① 立ち上がりテスト:片脚で40㎝の高さから立つことができない

② 2ステップテスト:1.3に達しない

③ ロコモ度25:7点以上

 

2) ロコモ度2

① 立ち上がりテスト:両脚で20㎝の高さから立つことができない

② 2ステップテスト:1.1に達しない

③ ロコモ度25:16点以上

 

3) ロコモ度3

① 立ち上がりテスト:両脚で30㎝の高さから立つことができない

② 2ステップテスト:0.9に達しない

③ ロコモ度25:24点以上

 

予防

 ロコモの予防には適度な運動と栄養です。何かがあってから対策するのも大切ですが、何かを起こさない事が大切です。特に、食事は栄養摂取により骨や筋肉を作るためかなり重要です。1度の食事で量を摂取することがつらい方は分食を行い、3回ではなく5回に分けて少量を頻度増やして摂取するなど工夫してみましょう。

 また、生活習慣病の方の場合は運動量をしっかりと確保しましょう。15〜20分程度の有酸素運動や下記に示す運動を行い少しでも血液データの数値改善を図り、結果的にロコモにならないように予防しましょう。

 運動の例としては、スクワットやヒールレイズ(かかと上げ)、片脚立ちなどです。

1週間の中で2回、30分程度の運動が推奨されています。

予防体操

・スクワット

 脚を肩幅程度に広げて、ゆっくりお尻を引くように膝を曲げていき、ゆっくり元に戻します。回数は5〜10回を1セットとし2〜3セット実施してみましょう。

※歩行や立位が不安定な高齢者の方はベッドや椅子から立ち座りをゆっくり行う「椅子スクワット」も効果的です。

・ヒールレイズ(かかと上げ)

 スクワット同様に肩幅程度脚を広げ、壁や椅子の背もたれに指をかけてかかとをあげます。回数は10〜15回を目安に余力のある方は、もう少し回数を増やしても問題ありません。また、片脚で行うとより負荷がかかります。下腿三頭筋(ふくらはぎの筋肉)は第二の心臓と言われるくらい重要な筋肉です。特に歩行の際には必要な筋肉ですし、浮腫がある方などにも有効です。

・片脚立ち

 転倒リスクがありますので、壁や何か支えのある場所で行います。

左右ともに30秒〜1分間を左右で行います。

・Hip Rift(お尻上げ)

 仰向けに寝ます。肩幅程度に脚を広げます。手は胸の前で組みお尻を締めながら息を吐きお尻を上げます。回数は10〜15回程度行いましょう。上げることに意識が向きすぎると腰が反り腰痛になるため、息を吐くこととお尻を締めることが注意点です。

・Leg Extension(膝伸ばし運動)

 椅子に座り、両手を胸の前で組むか、椅子を把持します。

息を吐きながら交互に膝を伸ばします。ポイントはしっかりと伸ばしきることです。

もも裏が硬い方はやや膝が伸びきれないかもしれません。それでも行える範囲で実施しましょう。

 回数は10〜15回行います。

 ロコモティブシンドロームは近年、日本の長寿により健康寿命の延長に必要な概念とされています。おかだ整形外科には様々な整形外科疾患の患者様が来院され、様々な症状に対して向き合っております。来院された患者様がロコモへと移行しないように院長をはじめリハビリテーション科は色々な運動を実施、また指導させていただいております。

 何か気になる症状がある方や上記のロコモ度チェックでロコモを疑われる方は、おかだ整形外科へ受診してみてください。健康寿命を伸ばしましょう。

 

※このブログはロコモON LINE 日本整形外科学会のホームページを参考に作成しています。

 

理学療法士 牧 将平