骨折について
2021/12/05
骨折とは、「骨折の解剖学的な連続性が、なんらかの原因によって途絶えた状態のこと」である。難しい言い方ですが、簡単に言うと外からの力が加わることで骨が完全、または部分的に連続性を失った状態のことを指します。
本来、骨折は骨の強度を超えた外力により起きますが、全身や局所の骨が病的に脆弱化すること、軽微な外力や一定部分に繰り返し伝わるストレスにより疲労による骨折が起こることもあります。
修復過程
骨折が起きると、損傷近くの部位の骨膜、軟部組織などで修復反応が起きます。
下記の順番で体内に反応が生じ骨折は修復されていきます。
・損傷期
受傷後数時間、骨折により損傷した骨膜や軟部組織の血管から出血が生じます。
骨折線は壊死します。
・炎症期
骨折後数時間〜7日間。形成された血腫の周囲に炎症性反応が生じます。
白血球などにより壊死組織が除去・吸収されるとともに、血管が新たに生じます。
・修復期
骨には線維芽細胞と破骨細胞という細胞があります。修復期には、線維芽細胞などが炎症部に認められるようになります。そして線維組織に少量の骨が混ざった組織(類骨組織)で骨折端同士が連結されます(軟性仮骨)。この軟骨組織にカルシウムが沈着し、硬性仮骨(2次性仮骨)となります。この仮骨は過剰に形成され、骨が太くなったように見えますが強度は低いです。2次性仮骨は、破骨細胞と骨芽細胞の作用によって、外力に応じて層状の強固な構造になっていきます。
※破骨細胞
骨を破壊(吸収)する役割を担う細胞で周囲に酵素を発して骨を融解する細胞です。
※骨芽細胞
骨を形成する役割を担う細胞で自己の周囲に骨基質を作り、それに埋まって骨細胞の基盤となる細胞です。
・リモデリング期
骨の吸収とより強固な構造への置換の過程のことをいいます。この過程において、骨皮質は力を多く受ける部位では厚くなり、少ししか受けない部位では薄くなります。この場合の力は下肢の場合で言うと荷重になります。
骨折の分類
1. 原因による分類
・外傷性骨折
正常な骨の抵抗よりも強い外力によって生じます。衝撃や筋の異常な収縮など直接外力が加わった部位に生じる骨折と、介達外力として外力が加わったところと離れた部位に生じる骨折があります。
・病的骨折
骨が病的状態となり強度が低下して起こる骨折で、正常ならば耐えられる強さの外力で生じます。原因は悪性腫瘍(がん)の骨転移、骨粗鬆症などです。
・疲労骨折
健常な骨に僅かな強さの外力が繰り返し加わり、応力が一点に集中したことで生じる骨折です。スポーツなどの激しい運動の繰り返しで起こりやすく、脛骨や中足骨に起こりやすいです。
・脆弱性骨折
骨粗鬆症や長期の透析患者、関節リウマチ患者に見られるような骨量が低下している骨で生じる骨折で、日常生活で行われる程度の軽い運動の繰り返しで起こり、椎体や骨盤、大腿骨頚部に好発します。
2. 程度による分類
・完全骨折
骨の連続性が完全になくなったもの
・不全骨折
骨の連続性はありますが骨梁の連続性がなくなったものです。例えば亀裂骨折(骨のひび)や若木骨折などです。
3. 骨折部と外部との交通の有無による分類
骨折時に皮膚を破っているか否かにより分類されます。外界や皮膚の表皮には多くの細菌が存在しますので、皮膚を破っていれば感染の可能性が極めて高くなります。
・皮下骨折、単純骨折
骨折部に外界との交通がなく皮膚に創がないか、もしくは創があっても骨折部とは直接繋がらない状態です。
・開放骨折、複雑骨折
骨折部が外界と交通し、皮膚創があり、出血も多く、空気に一度触れたら汚染した骨とみなされて、感染防止のための治療(清浄、挫滅部の処置、固定、感染予防の投薬、創や皮膚欠損の処置)が行われます。特に骨折後6時間以内をゴールデンピリオドと言い、その間に処置を行うことを目指します。
評価
骨折が疑われる場合は、レントゲン写真を撮影します。骨折の変化が画像上はっきりしない場合は、診察での身体所見なども併せて最終判断となります。細かな骨折ではMRIが診断に有用なことも多いです。きっかけが交通事故などの場合は、複数箇所が骨折している場合がありますのでCT検査を行うこともあります。
四大骨折
四大骨折とは、橈骨遠位端骨折、上腕骨遠位端骨折、脊椎圧迫骨折、大腿骨頚部骨折のことです。これらは、特に骨密度が低くなった女性に多い傾向にあり、これらのほとんどが転倒や転倒時にバランスを崩して手を地面についた際や尻もちをついた際に起きます。
骨折は高齢者に多く、高齢者になると筋萎縮や筋力、骨関節、呼吸器系や循環器系、神経系などあらゆる機能低下が起きます。そのため歩行速度が低下し、片足支持が困難になり、バランス能力も低下し、すり足などの特徴的な歩行が見られ体力の低下を引き起こします。
筋力は30歳をピークに徐々に下降し、長期的に低下します。主に速筋線維の萎縮や低下が起こるため、瞬発力の低下をきたしやすく、方向転換や動作開始時の反応が遅れ、ふらつきや転倒の原因となります。
骨塩量は30〜40歳代をピークとなりますが、その後、女性は閉経をきっかけに急速に低下します。さらに骨形成自体の能力も徐々に低下するため、骨粗鬆症が起きます。
※高齢者の転倒発生率…
高齢者の転倒発生率は地域で生活している高齢者の1〜2割とされています。
しかし80歳代を超えるとその率は2倍に上がるとされています。
以上が骨折についてです。今回、骨折について記載したのは前回のブログでロコモティブシンドロームについて記載し、このロコモにつながる原因に骨折と転倒が深く関係してくるからです。前回のロコモの記事と併せて読んで頂けると幸いです。
理学療法士 牧 将平