橈骨遠位端骨折について
2022/02/27
高齢者には四大骨折といわれる代表的な骨折があります。今回は橈骨遠位端骨折についてです。前回も説明しましたが四大骨折とは、橈骨遠位端骨折、上腕骨近位端骨折、脊椎圧迫骨折、大腿骨頸部骨折です。これらは女性に多く、これらのほとんどが転倒時にバランスを崩して手を地面に着いた場合や尻もちを着いた時に起こります。
橈骨遠位端骨折とは
橈骨遠位端骨折の好発年齢は50歳代より始まり、70歳代以降に増大します。
転倒した際に手をついて受傷しやすく、高齢者の場合は軽微な外力でも受傷しやすいです。
症状は、手関節痛や腫脹が主でありますが、転移の少ない場合は、圧痛と軽度の腫脹のみの場合もあります。
原因
前腕は、尺骨と橈骨という2本の骨で構成されており、親指側にある太い骨を橈骨と呼びます。橈骨は太く、硬い構造をしていますが、多少の外力が加わっただけで骨折します。
骨粗鬆症を患う高齢女性などでは、転倒して軽く手をついただけで橈骨の遠位端に骨折を生じることがあります。また、高齢者でなくても、転落や交通事故などで非常に強い外力が加わった場合には骨折を生じることもあります。
分類
橈骨遠位端骨折には骨折の仕方によって分類されます。コーレス骨折、スミス骨折、バートン骨折などに分類されます。
①コーレス骨折
転倒時に手の甲側に反らした状態で地面に着いた場合に起こります。遠位部の骨片が手の甲側に突き出している骨折です。更に転移すると手首がフォークを伏せて置いたような形(フォーク状変形)になります。
②スミス骨折
転倒時に手のひら側に手関節を曲げた状態(手の甲)で接地し受傷します。コーレス骨折の逆の変形を生じます。
③バートン骨折
橈骨の遠位端が手首の関節を巻き込んで骨折を生じるものです。
症状、合併症
骨折部位の偏位と痛み、腫れ、発赤などを生じます。手首の関節が正常に機能せず、手関節運動が困難になります。手首を走行する正中神経にダメージが加わると、親指の運動障害や、親指から薬指にかけての感覚低下、しびれが引き起こされることもあります。骨折の影響で長母指伸筋腱などの腱が後日断裂することもあります。さらに、不完全な偏位部の整復や、長期間にわたる過度な固定により、関節が硬くなり骨が委縮するような後遺症を遺したり、不自然なほどの非常に激しい痛みが生じる「複合性局所疼痛症候群(Complex regional pain syndrome: CRPS)」という神経障害を引き起こしたりして、治療に非常に苦労してしまうことがあります。
検査、診断
転倒後の手首の変形や痛み、腫れなどから、骨折していることは外見から容易に判断できることも多いです。病院を受診して第一に行われる検査は、レントゲン検査です。レントゲン検査は、もっとも簡便に行える画像検査であり、骨折の有無や骨の偏位を明瞭に観察することができます。
また、手首の関節に多数の骨片を伴う場合など、レントゲン検査だけでは全貌を観察することができない場合には、CTやMRIによる精査が行われることもあります。
レントゲンでは診断できないような細かい骨折の場合、MRIを追加することで診断がつく場合もあります。
治療
橈骨遠位端骨折の場合、転移の状態や合併症の有無によっても異なりますが基本的に保存療法を選択されます。しかし、整復を得にくい場合や維持できず転移してしまった場合は不安定型骨折と判断され、手術療法を選択する場合もあります。
①保存療法
麻酔下で徒手整復し、ギプスやスプリントなどを用いて外固定を行います。
固定期間は、おおよそですが肘上までが2〜3週間、その後前腕固定を2〜3週間の計4~6週間程度です。
②手術療法
手術療法は低侵襲が望まれるため、軽費的ピンニングや創外固定法などといった方法が用いられます。しかし、粉砕骨折や重度な骨粗鬆症の場合は整復が不十分となり、転移の残る例も少なくないです。そのため、早期から強固な固定を得れるプレートを用いた骨接合術などが行われています。
予後
橈骨遠位端骨折が関節内に及ぶ場合や転移による変形が見られる場合は、疼痛、関節可動域制限を残す場合があります。しかし、高齢者では保存例の長期経過例で転移が生じた場合と手術例を比較しても日常生活に差は見られないとも言われています。
終わりに
今回は、橈骨遠位端骨折について紹介しました。手関節の骨折ですので日常生活を送る際には様々な影響がでます。受傷のきっかけは些細な転倒かもしれません。この転倒はなかなか厄介で、様々な骨折などのきっかけになります。予防は圧迫骨折やフレイルのページにも記載していますので、ぜひご覧になってください。
理学療法士 牧 将平