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腰部脊柱管狭窄症について

2022/05/01

はじめに

 長時間歩くと足が痺れて歩きにくいや休憩しないと辛い、休憩すると楽になるといった症状はないでしょうか。もしかしたら、それは腰部脊柱管狭窄症かもしれません。脊柱管狭窄症という病名は聞いたことあるでしょうか。今回は、脊柱管狭窄症について記載したいと思います。

 

概要

 

 背骨は、椎骨や椎間板、黄色靭帯などで構成されており、その内側には脊髄の神経が通る「脊柱管」があります。脊柱管狭窄症とは、その脊柱管が狭くなる病気です。50歳代から徐々に増え始め、60~70歳代に多くみられます。高齢者の10人に1人は腰部脊柱管狭窄症であり、推定患者数は約580万人といわれています。
加齢や仕事による負担、腰の病気などにより、背骨が変形することで脊柱管が狭くなります。そのせいで、中の神経が圧迫されて血流が悪くなり、腰や足の痛み、しびれなどの症状が起こりますが、圧迫される神経の場所によって、症状の表れ方が異なります。
 脊柱管狭窄症は脊柱が狭窄している部位によって、頚部脊柱管狭窄症、胸部脊柱管狭窄症、腰部脊柱管狭窄症、広範脊柱管狭窄症に分けられます。頚部の脊柱管狭窄が原因となって脊髄が圧迫される場合は頚椎症(頚椎症性脊髄症や頚椎症性神経根症)と呼ばれる場合もあります。もっとも多い狭窄部位は腰部で、坐骨神経痛の一般的な原因としても知られています。腰部脊柱管狭窄症では歩き続けると症状が強くなり、休むとまた歩けるようになる間欠性跛行が特徴的な症状として現れます。

原因

 脊柱管狭窄症のもっとも重要な原因は加齢です。加齢によって骨が変形したり、背骨の周りの靱帯が厚くなったりすると、脊柱管が狭くなり神経を圧迫することがあります。一方で、生まれつき脊柱管が狭かったり、成長の過程で脊柱管が狭くなるような変化が起こったりする場合もあります。椎間板ヘルニア、脊椎すべり症、脊椎側弯症などの背骨が変形する病気が原因となり、脊柱管が押しつぶされて症状が現れることもあります。また、事故や激しいスポーツなどによる衝撃が原因となって脊柱管狭窄症を発症することもあります。

症状

 症状は手や足のしびれや痛み、つっぱり感、指の細かな動作のしにくさ、歩行の不自由さなどです。進行すると、運動障害が悪化するとともに排尿障害などを引き起こし、日常生活に支障をきたすことがあります。症状は左右両側に出ることもあれば、片側だけの場合もあります。

 特に腰部脊柱管狭窄症の代表的な症状として、間欠性跛行があります。

 間欠性跛行とは、人によって様々ですが歩き続けていると症状が悪化して歩けなくなり、前かがみになって休むと症状が和らいでまた歩けるようになる状態です。

腰部の脊柱管狭窄症では、背骨を反らすと脊柱管が狭くなって神経の圧迫が強くなり症状が現れます。病気が進行すると、連続して歩ける距離や時間が次第に短くなっていきます。

類似疾患・症状

 

 脊柱管狭窄症以外の病気でも足腰の痛みやしびれ、間欠跛行など、脊柱管狭窄症と同じような症状が起こる病気があります。画像検査などで症状の原因を正確に調べることが重要です。

 

・椎間板ヘルニア
 背骨の骨同士の間でクッションの役割を果たしている「椎間板」が、加齢などによって変性、断裂し、その中身が出てきて神経を圧迫する病気です。それにより、腰やおしり、足に痛みやしびれなどの症状が起こります。

 

・末梢動脈疾患
 主な原因疾患は閉塞性動脈硬化症に代表される動脈疾患です。下肢の動脈が狭くなったり、詰まったりして血流が悪くなる病気です。症状は動脈閉塞の部位によって変わりますが腓腹筋部が多いです。血流が悪くなる(阻血)ために、痛みやしびれなどが起こり、間欠跛行などの症状がみられることがあります。重症化すると足を切断しなければならなくなることもあるため、早期発見・治療が重要です。

 

・糖尿病性神経障害
 糖尿病で最も多くみられる合併症のひとつです。神経が障害されることで足のしびれや痛みなどの症状がみられ、進行すると手指のしびれや痛みなどもみられるようになります。糖尿病にかかっていて、下肢のしびれや痛みがある場合には注意が必要です。

診断

 単純X線(レントゲン)写真である程度は推測できます。しかし詳しく診断するためにはMRIや脊髄造影などの検査が必要となります。下肢の動脈がつまって血行障害を生じた時にも似たような症状がおこりますので、原因を正確に調べることが必要です。

 

治療

 大きく分けて保存療法と手術療法があります。

日常生活に問題がない場合には、経過観察をしながら保存療法が行われます。

日常生活への支障が大きい場合には手術が検討されます。また、頻尿や尿失禁、尿閉などの排尿障害がある場合には、手術が選択されます。

 

・保存療法

保存療法としては、局所麻酔剤などを注射する神経ブロック、鎮痛薬や血行を促進する薬などによる薬物療法、コルセットなどを装着する装具療法、運動療法があります。

 運動療法は腰部を中心とした体幹筋力や可動域、周辺関節の股関節可動域、筋力を維持や改善して症状の緩和を図ります。症状が軽い場合は保存療法で改善することもあります。保存療法を続けても改善しない場合や、症状が悪化して歩行や日常生活に支障を来たす場合には手術を検討します。

 

・手術療法

脊柱管狭窄症の手術には、主に、脊柱管を圧迫している骨や椎間板、靭帯などを切除して脊柱管を広げ、神経の圧迫を取り除く「除圧術」と、脊柱管を広げた後に金属やボルトで背骨を固定する「除圧固定術」があります。

予防

 

 脊柱管狭窄症は、年齢的要因などにより姿勢不良を生じる事によって発症しやすくなります。また転倒による衝撃などによっても神経症状が見られるようになることもあります。 姿勢不良に対しては、姿勢の正しい状態を保つことが大切です。

 正しい姿勢とは、一体どういう姿勢でしょうか。チェック方法を記載しますのでセルフチェックしてみましょう。

①  壁から30㎝程度前に背を向けて立ってみましょう

②  そのままの姿勢で壁の方へ下がってみましょう

③  壁と腰の間にできた隙間を確認しましょう。

・殿部と背中どちらが先に壁につきますか?

 

・壁と腰との間隔はどうですか?

・現状はどうでしょうか?

 

④ 結果です。

Aにチェックが多くついた方はいわゆる「正常」です

Bにチェックが多くついた方はいわゆる「猫背」です

Cチェックが多くついた方はいわゆる「反り腰」です

 

どうだったでしょうか。日常生活で姿勢を正しく保つことは脊柱管狭窄症の予防につながります。一方で、すでに脊柱管狭窄症を発症している場合には背筋を伸ばすことで症状が強くなる場合があるため、無理に姿勢を正そうとしないでください。

最後に

 脊柱管狭窄症では、圧迫の程度や自覚症状、日常生活でどのぐらい困っているかなどによって、最適な治療法が異なります。いつまでも健康に過ごすために、自己判断はせず、つらいと思う症状がある場合には早めにおかだ整形外科を受診し、治療法や今後の方針について相談しましょう。

 

理学療法士 牧 将平