腰椎椎間板ヘルニアについて
2022/06/19
概要
腰椎椎間板ヘルニアとは、腰椎(つまり腰)に生じた椎間板ヘルニアのことです。
様々な要因がありますが、重いものを持つことで腰に負担をかけることで発症することもあります。症状は腰痛や神経症状などが起きたりもします。発症年齢は20~40歳の方が多いです。
対策としては症状の悪化を防ぐため、安静を保ったり、コルセットを着用したり、痛み止めを服用したりリハビリ(運動療法や物理療法)を実施します。神経症状が強い場合には、手術を行うこともあります。
原因
首から腰にかけて存在する背骨(脊椎)は椎体という大きな骨と間に挟まれたクッションである椎間板で構成されています。椎間板の外側は線維輪と呼ばれる組織で保護されています。
腰椎は腰部分に位置しており、重たい物を持ち上げるなど腰に強い負荷がかかったとき、線維輪が損傷することがあります。線維輪が損傷すると、内部に存在する髄核が椎間板の外へ飛び出てしまいます。これをヘルニアといいます。
腰椎部の脊柱管という空間には馬尾という神経が通って坐骨神経や大腿神経となり足先までつながっていますが、腰椎椎間板ヘルニアで髄核が外に飛び出ると、これら神経を圧迫して腰痛をはじめとする諸症状が現れるようになります。
腰椎椎間板ヘルニアは腰に負担のかかりやすい職業に就いている方などが発症しやすいといわれています。また喫煙習慣や既往症(かかっている病気)などもリスク要因となることが知られています。
症状
腰椎椎間板ヘルニアの主な症状は腰痛です。また、神経が圧迫されることによりしびれ、痛み、運動障害など神経症状が現れることもあります。特に神経根が圧迫されることにより、下肢(足)やお尻周辺にしびれや痛みを生じることが多いです。下肢の運動神経が麻痺すると筋力が低下し、例えば前脛骨筋という脛の前の筋肉が働きにくくなると歩行時につま先が反りにくくつまずきやすくなったりします。
ほかにも、排便や排尿に関連した神経が腰椎椎間板ヘルニアの影響を受けると、便や尿が出にくくなることがあります。
検査・診断
腰椎椎間板ヘルニアの診断では、神経に関連した症状があるか確認するため、X線である特定の姿勢をとってもらい変化が生じるか確認します。また、髄核の脱出の程度や神経に対する圧迫などを確認するため、MRI検査を実施します。MRI検査には、腰椎椎間板ヘルニアの確定診断のほか、腰椎椎間板ヘルニア以外の病気が隠れていないかどうか調べる目的もあります。
治療
腰椎椎間板ヘルニアで痛みが激しい時には、安静にする必要があります。
痛みが生じないような姿勢で安静を保つほか、コルセットなどの装具を使用します。痛みの程度によっては湿布や鎮痛薬を使用することもあります。また、なかには神経ブロックと呼ばれる治療を行うこともあります。
またリハビリ(運動療法や物理療法)を実施することもあります。
運動療法
運動療法では痛みに応じて行います。
寝返りなどでも痛みが出る場合は寝返りの方法へのアドバイスや生活指導や動作指導を行います。
運動に関しては症状によっても変化しますが、弱点となる部分の強化や、動きにくいところ(関節可動域制限)がある部分は、動きやすくなるようにストレッチや動きにくくなった原因をつぶしていきます。
物理療法
物理療法では、牽引や低周波、温熱療法としてホットパックを行うこともあります。
上記のような保存的療法が治療の基本となる腰椎椎間板ヘルニアですが、尿失禁、尿が出ない・肛門がしびれた・麻痺が出たなど重篤な症状が見られる場合には、緊急手術を含め外科的治療が必要なこともあります。腰椎椎間板ヘルニアの手術では、椎間板切除術と呼ばれる方法をとることが多いです。内視鏡を用いることも増えています。
手術療法
全身麻酔下に、腹臥位(うつ伏せの姿勢)で行います。腰部の真ん中に皮膚切開を行い、腰椎の後方(椎弓)に付着している筋肉を剥離します。次に手術用顕微鏡下に、腰椎の後方部分の一部の骨を削除し脊柱管内に入り、黄色靭帯を切除後、圧迫されている神経根を確認します。その後、この神経を保護しながら、圧迫原因となっている椎間板ヘルニア塊を摘出します。 これらの手術操作は手術用顕微鏡下に慎重に行われます。神経根に対する圧迫を除去できたことを確認後、創部ドレナージと呼ばれる細い排液用の管を留置して手術を終えます。ヘルニアの部位・大きさにより手術時間は異なりますが、通常は1-3時間程度の手術です。
終わりに
今回は腰部椎間板ヘルニアについて記載しました。
腰痛は様々な要因があります。我慢、無理をせず、来院されてください。
診察、レントゲンで原因を突き止めて服薬、リハビリ(運動療法や物理療法)でしっかりと治療していきましょう。
理学療法士 牧 将平