足関節捻挫について
2022/10/02
はじめに
皆様は日常生活で何気なく歩いていたり、スポーツの最中に足首を突然捻ってしまった事はありませんか?
足関節捻挫とは、足首を強く内側に捻ること(内反:ないはん)、逆に外側に捻ること(外反:がいはん)で足首やその周辺の靭帯に損傷が起こる事を指します。
足関節捻挫はスポーツ外傷の中で最も頻度が高いです。多くが外側の靭帯が損傷する内反捻挫です。スポーツレベルは、レクリエーション、学校体育からトップレベルの競技全般において発生します。
また、足関節捻挫の再発率は50〜70%と高く、捻挫を繰り返すことで慢性足関節不安定症(CAI)に進行する場合もあります。 専門的な診断と治療を行い、早期スポーツ復帰に向けた取り組みが必要です。
しかし、足関節捻挫は軽症と判断されて放置されてしまうことが多い疾患でもあります。
その為、今回は足関節捻挫について投稿し足関節の構造や足関節捻挫について知って頂きたいと思います。
足関節捻挫のまとめ
・足関節捻挫は内反捻挫が多く損傷靭帯は外惻の靭帯損傷が多い
・スポーツの怪我では最も多く再発も多い怪我
・構造上不安定な関節である
・軽症と思われることが多く他の怪我を招くことも隠れていることある
・重症度によって治療方法や期間は変わる
・痛みや腫れに応じて早期のリハビリが必要である
概説
・足関節の構造
足関節捻挫には、内反捻挫と外反捻挫がありますが、そのほとんどが内反捻挫(約95%とも言われている)です。
足関節には距腿関節、距骨下関節の2つの主要な関節があり、その2つの関節にはいずれも筋肉が付着していません。つまり、足関節の靭帯を損傷することで、支持性と運動機能が大きく低下します。これらの関節を安定化させるための靭帯が複数存在します。
距腿関節は「ほぞ穴」構造となっており距骨がはまり込む事で骨性安定しています。
足関節には内果(ないか=うちくるぶし)と外果(がいか=そとくるぶし)があり内果の方が短いため内側に傾きやすい形状もあり内反捻挫しやすいとも言えます。
また関節の動く方向性でも捻挫しやすい肢位があります。それは底屈位(ヒールを履いた状態)です。これは上記したように足関節はほぞ穴構造で骨性にて安定しており、底屈位では不安定となり捻挫しやすい状態と言えます。
足関節捻挫で最も損傷されやすい靭帯は、前距腓靭帯と踵腓靭帯です。この外側の2つの靭帯は足関節の内反を制動しているため、特に損傷を受けやすくなっています。
靭帯の主な修復過程は、炎症期(受傷早期)→増殖期(受傷3日目から8週間程度)→リモデリング期(受傷4週〜半年程度)の順に進んでいきます。
・特徴
米国の疫学調査では一般市民1000人年当たり2.15件の足関節捻挫が発生しています。その9.3%はスポーツ活動中の発生で、バスケットボールが最も頻度が高く、フットボール、サッカー、ランニング、バレーボール、ソフトボール、野球、体操の順で多いと発表されています。
日本プロサッカーリーグー(Jリーグ)の障害調査では15シーズン2947件の障害報告の中で足関節捻挫(靭帯損傷)が523件で最も多かったとされています。
年代別では中学生以下が約25%、高校生以上でも約30%と年齢を問わず発生するのも特徴です。
つまり、足関節捻挫は頻度の高いスポーツ外傷でありながら、上記した構造上で日常生活でも生じやすい怪我でありどの年代も生じ易い怪我(外傷)とされています。
原因・症状
原因としては競技中に足が滑ったり、着地を失敗して足首を捻り、急激な内反が強制され外側にある前距腓靭帯などに伸張ストレスなどを生じて損傷や断裂します。ジャンプの着地時に人の足の上に乗り、足関節の内反が強制されて受傷する場合があります。
また、段差の昇降時に足首を捻るなど、日常生活中にも起こります。子どもの足関節捻挫は、遊んでいるときにくぼみに足をとられたり、他の子どもの足にのってしまったりすることにより起こることがあり、剥離骨折を伴うこともあります。
足関節捻挫の症状としては、足首の外果前方付近(外くるぶしの前や下方)に腫れ、内出血や疼痛が診られます。
捻挫の程度によっては足を着いて歩くことが難しい場合もあります。
捻挫をしても症状(特に疼痛など)が軽度の場合は、自然回復を待って放置してしまうことが良くあると思います。
そして「軽い足首の捻挫」という認識により、早期の正しい診断と治療が行われないと、靭帯修復が進まず後々痛みが残ることがあります。
また、靭帯が傷んだ状態でスポーツなどを行うと、足関節の不安定性が改善していないため再受傷する可能性もあります。
さらに足関節を他関節代償する事により他関節の負荷が上がり、膝や股関節の怪我につながりやすくなります。
特にスポーツ復帰を目指す場合、正しい診断と受傷初期の処置、早期リハビリが重要になってきます。
検査・診断
診断時には、問診にて受傷時の状況や関節を捻った方向などを患者様に話を聞き、圧痛や腫れの有無、徒手的に靭帯の緩みの程度などを確認します。
また、骨折の評価としてレントゲン検査を行うこと、靭帯の状態を確認するために当クリニックではエコー検査を行います。
重症の場合はMRIにて損傷靭帯の状況を評価しつつ、合併症として骨軟骨や骨折の評価も行います。
治療
靭帯損傷(捻挫)は重症度毎に以下の3つに分類されます。
重症度による症状の違いと治療期間、治療の流れはおよそ以下の通りです。
Ⅰ度損傷:靭帯部分断裂(靭帯繊維の軽微な損傷)
軽く腫れて弱い痛みがある状態。内出血は少なく歩行可能な事が多い。
・治療期間:2週間前後
・関節不安定性:ほとんどない状態
・固定:固定の必要なし。もしくは弾性包帯やサポーターを利用
Ⅱ度損傷:靭帯部分断裂と関節包損傷(靭帯の部分断裂あり関節不安定性を認める状態)
強い腫れと内出血、痛みを伴う状態。歩行はかろうじて行うことは可能か、もしくは不可能な状態
・治療期間:4〜8週間前後
・関節不安定性:軽〜中等度診られる。特に前方不安定性。
・固定:弾性包帯やテーピング、短期間シーネ固定
Ⅲ度損傷:完全断裂と関節包損傷
強い腫れや内出血、痛みがあり歩行は不可能な状態
・治療期間:8〜16週間前後
・関節不安定性:強い。前方、内反不安定性。
・固定:シーネもしくはギプス固定、もしくは手術療法
治療の流れ
Ⅰ度損傷は、痛みや腫れに応じて日常生活を行います。
特に腫れが生じている場合は腫れが引くまでは激しい運動を控え、心臓より高く挙上し足の指運動や足関節を動かし腫れを引かせてから運動を開始しましょう。
腫れがある状態では関節は不安定のため再受傷、さらに重症な捻挫をしてしまう可能性があります。
Ⅱ度損傷は痛みが強く、歩行が不可能な状態では数日間のシーネ固定と松葉杖による歩行を行います。体重は痛みに応じてかけていきます。
シーネ固定は損傷した靭帯の状態をエコーにて評価しながら、関節の安定性を確認し痛みや腫れが良くなり次第、サポーターに変更し6週から8週程度継続します。
リハビリは早期から行い靭帯の修復促進、足関節の機能低下や他関節の機能低下を予防していきます。
診察にて靭帯の修復状況や関節の安定性が問題なければ日常生活に支障はありません。
しかし、スポーツを再開する際は片足立ち(安定面、不安定面)や爪先立ち(両足、片足)が無理なく出来る様になり次第、ジョギングなど低強度から実施していきます。
Ⅲ度損傷はⅡ度損傷よりも痛みが強い状態です。また関節不安定性も大きいため7〜10日前後のギブス固定と松葉杖を使用した免荷を行います。
損傷した靭帯の状況をエコーやMRIにて評価し、部分荷重を行います。荷重量をコントロールしながら、早期のリハビリを開始し靭帯の状況を踏まえてサポーターへと変更していきます。受傷から約3ヶ月経過後にエコーやMRIにて靭帯状況の評価で、痛みや不安定性の残存が見られた場合は手術療法を検討する場合もあります。
術後は約4週程度のギプス固定を経て、約8週以降の運動再開となります。
※上記の治療の流れはおおよその目安であり、患者様の状態(患部の状態や職業、体型など)に応じて適宜変更されます。
終わりに
今回は足関節捻挫について記載しました。
軽症の場合ほど放置される怪我であり、その後の大きな怪我につながる怪我でもあると思います。
日常生活やスポーツ動作で足関節を捻ってしまい、安静にしていても変化がない場合や違和感が消えないなど様々な症状があると思います。
東灘区おかだ整形外科までご相談ください。
理学療法士 牧 将平