Test(アキレス腱断裂について)

診療時間・休診日

ブログ

アキレス腱断裂について

2023/04/09

概要

 アキレス腱断裂とは、足首の後面にある太い腱が切れた状態のことで完全断裂と部分断裂に分けられます。

好発年齢は30代〜40代ですが、10代から高齢者まで幅広い年齢の方々に起こる可能性があります。

若年者はスポーツ中での受傷が多く、50歳代以上では日常生活中での受傷が多いです。

性差では、男女比に大きな差はないという報告や男性に多い傾向にあるという報告がみられています。

スポーツの中ではラケット競技や球技での受傷が多く、種目としては、バトミントン・テニス・バレーボール・サッカー・バスケットボールなどの競技での発生頻度が高いと言われています。

アキレス腱とは

 腓腹筋とヒラメ筋から構成されており、長さ15〜20cm、厚さ6mmで人体中最大で最強の腱で約1トンの荷重に耐えられるといわれています。体の中でもっとも大きな腱で起立動作や歩行の際に緊張と弛緩を繰り返し、走行やジャンプする際にはより大きな張力がかかるといわれています。歩行時には体重の薬4倍、走行時には体重の約12倍かかるといわれています。また、アキレス腱はパラテノンと呼ばれる結合組織に覆われており、このパラテノンから血液供給が行われています。アキレス腱には付着部から2~6㎝において血流量が少ない部分が存在します。その部分で断裂がみられやすいことから、血流量とアキレス腱断裂の関連性も唱えられています。

要因

 アキレス腱断裂の要因としては年齢、性別、アキレス腱の変性やステロイド単独または抗菌薬との併用があげられています。

 アキレス腱の変性によりアキレス腱障害と診断された人の約4%は最終的にアキレス腱断裂を生じたとの報告がされています。また、これらの報告ではアキレス腱断裂になった人は30~50代が最も多く、男性で多かったとされてきます。アキレス腱断裂の多くはアキレス腱に退行変性が生じており、アキレス腱は肥厚し腱の強度が脆弱化している可能性があります。前回のブログで記載したアキレス腱障害(アキレス腱炎など)の症状が場合には注意が必要だと考えられます。またアキレス腱障害を生じている人は中性脂肪が高いことも報告されています。アキレス腱断裂を生じた人の83%に脂質異常症(高脂血症)を認めたとの報告もあります。

症状

 腱が切れる瞬間は「ブチッ!」「バンッ!」などという破裂するような音は「pop音」とよばれ、アキレス腱断裂発生時の特徴的な症状です。またpop音とともに衝撃を感じる人が多く、「後ろから蹴られた感じ」「ボールをぶつけられた感じ」がすると言われています。
 アキレス腱が切れるとふくらはぎの筋肉がうまく作用しないため、つま先立ちができなくなりますが、足首を動かすことができたり、しばらくすると歩けるようになったりすることもあります。しかし、そうした場合でもアキレス腱が切れてしまっていることはあるため、注意が必要です。

検査・診断

 問診では自覚症状や受傷後の状態などからアキレス腱断裂の疑いを考えます。理学所見ではアキレス腱の断裂部分を医師が触れて確認したときに感覚はあるかどうか、つま先立ちはできるかどうか、徒手検査(Thompson testなど)の結果を踏まえてアキレス腱断裂の可能性を判断していきます。診断を確実にするためにはX線検査や超音波検査、MRIの画像検査を行い、結果か、治療方針の決定を行います。また、その他のアキレス腱疾患や足関節周囲の骨折や脱臼との判別も行う必要があります。

治療

アキレス腱断裂には、主に保存療法と手術療法という選択肢があります。

・保存療法

 保存療法とは、手術を行わずにギプスや装具を用いながら固定しアキレス腱の回復を図るものです。

 期間としては約6~8週間程固定します。装具での固定であれば経時的に患部の観察をすることができ、患部の衛生面も安心です。 しかし保存療法で一番危惧されることは再断裂です。発生率は約10%とされギプスまたは装具除去後1カ月以内(受傷後2~3ヶ月)が一番危険だとされています。また約4.5ヶ月程度から再断裂のリスクは低下していくとも言われており、健側と同等の硬度になるには約7か月かかり、この頃になるとスポーツ活動が行える腱強度になります。

 このように保存療法による治療は長期固定による筋力低下や再断裂率の高さ(手術した場合の約2倍)、スポーツ活動時期の遅延などがデメリットになります。

 

・手術療法

 手術療法は、手術によって断裂してしまったアキレス腱をつなぎ合わせる治療法です。アキレス腱断裂に対する手術には、多くの種類があります。例えば、Kessler法(ケスラー)やBunnel法(バネル)などです。アキレス腱の状態によって縫合法が変わります。

 手術のデメリットとしては感染リスクがあることと術後はアキレス腱修復を促すために装具などで敢えて可動域制限や荷重制限を用いる場合もあるため入院の必要があることです。

終わりに

 今回は、アキレス腱断裂について記載しました。アキレス腱断裂は、前回のアキレス腱障害から移行しやすい大怪我です。また、お子様の運動会や運動習慣の獲得のためにいきなりの運動で受傷しやすい怪我です。いきなりの高強度の運動ではなく徐々に運動強度を上げていきましょう。そしてウォーミングアップやクールダウンは大切ですのでしっかりと行いましょう。

私たち東灘区 おかだ整形外科は真摯に向き合い治療しています。

 

理学療法士 牧 将平