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膝蓋骨脱臼について

2024/01/28

概要

 膝蓋骨脱臼(しつがいこつだっきゅう)とは、膝蓋骨(膝関節のお皿)が、適正位置から脱臼する疾患です。

ジャンプの着地時などに大腿四頭筋が収縮して脱臼することが多いです。脱臼した際には、膝関節に痛みや腫れなどが生じます。

 膝蓋骨脱臼は膝関節外傷の約3%を占めるといわれており、スポーツ活動中に発症することが多い。初回膝蓋骨脱臼の発症率は年間10万人あたり23人で、10代の女性(男性の1.5倍)に好発します。

 また、初回膝蓋骨脱臼後の再脱臼率は33%とされています。

要因

 膝蓋骨脱臼の要因としては、下記の要因があげられます。

 

・脱臼素因

(生まれつきの素因:膝蓋骨が小さい、関節弛緩性など)

・膝蓋骨や大腿骨(太ももの骨)の位置異常

(膝蓋骨高位、下腿外旋など)

・大腿四頭筋の作用する方向と膝蓋腱の方向が異なっていることなど

・大腿四頭筋の筋力弱化

・動的マルアライメント(下肢全体の使い方)

症状

 脱臼した際には、強い疼痛や腫脹(腫れること)などの炎症症状があります。また膝蓋骨が脱臼しているため、膝関節の屈伸(曲げ伸ばし)ができなくなります。

慢性的な膝蓋骨周囲の疼痛や不安定感も出現し日常生活動作(歩行や階段、下衣更衣動作など)に影響を及ぼします。

 合併症として、脱臼時に膝蓋骨の内側を支える靱帯(内側膝蓋大腿靱帯)の断裂が起こることがあります。

また、放置してしまうと膝蓋骨と大腿骨の軟骨がすり減り膝蓋大腿関節症になるリスクもあります。

検査・診断

 診断は、受傷機転や症状、視診、触診にて容易に行うことが可能です。その際に何度か受傷した事があるかが大切な情報にもなります。

 検査には、レントゲン、MRI検査、CT検査を行います。膝蓋骨の現在の位置、細かな骨折の有無、軟骨損傷の有無、周囲の靭帯損傷について評価します。

また、稀に生まれつき脱臼位にあり(恒久性脱臼)、幼児期に始めて気づかれることもあります。

治療

 治療の方向性を定めるにあたって、診察時に何回目の脱臼かを確認します。初めて脱臼した場合、骨折や骨軟骨損傷がなければ装具などで固定をして加療します。その際にリハビリテーション(理学療法)を行い、筋力の改善や下肢マルアライメント(使い方)の改善などを行います。

十分なリハビリテーションを行っても、複数回の脱臼に至る場合は手術をお勧めします。

また、若年や骨端線開存、膝蓋骨高位、滑車形成不全などがあり、その3つ以上の因子がある場合、再脱臼リスクが70%以上になるため、手術を勧めます。

 

以下の場合は手術療法が勧められます。

 

・反復性脱臼(複数回脱臼)であり、日常生活活動ややスポーツ活動に制限がある場合。

・初回脱臼であるが、反復性脱臼になりやすい素因を持っている。

・脱臼時に大きな骨折や靭帯損傷を伴っている。

 

 手術には、幾つか種類があります。

しかし、内側膝蓋大腿靭帯(MPFL)が大腿骨と膝蓋骨を連結しており、内側への支持機構として50-60%の役割を担うと報告されています。そのため、近年MPFL再建術が一般的になりつつあります。

 患者様の状態により、内側膝蓋大腿靱帯再建術に追加して手術をします。

そのため、スポーツ復帰は状況にもよりますが6ヶ月以降を目安に目標とします。

また、保存療法の場合は3-4ヶ月を目標とします。

おわりに

 今回は、膝蓋骨脱臼について記載しました。若年女性に多い怪我ではあり、再発も生じやすい怪我ではあります。しかし、初回の外傷性脱臼に限ると発症時の年齢は膝蓋骨脱臼、亜脱臼全体でみると21.5歳となり、性差も少ない疾患となります。部活などスポーツをする際にはしっかりとウォーミングアップをしましょう。またスポーツ活動などや日常生活活動で脱臼症状を発症したら早期に受診しましょう。二次障害を防ぐことも大切です。

私たち神戸市東灘区の整形外科、おかだ整形外科は真摯に向き合い治療しています。

 

理学療法士 牧 将平