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大腿骨頸部骨折について

2022/04/11

 高齢者には四大骨折といわれる代表的な骨折があります。今回は大腿骨頸部骨折についてです。前回も説明しましたが四大骨折とは、橈骨遠位端骨折、上腕骨近位端骨折、脊椎圧迫骨折、大腿骨頸部骨折です。これらは女性に多く、これらのほとんどが転倒時にバランスを崩して手を地面に着いた場合や尻もちを着いた時に起こります。

大腿骨頚部骨折とは

 大腿骨頸部骨折とは、大腿骨の一部である大腿骨頸部と呼ばれる部分に生じる骨折です。

 大腿骨は人体のなかでも太い骨ですが、加齢や骨粗鬆症など骨がもろくなる状況が重なると大腿骨頸部骨折を発症しやすくなります。高齢化の進む日本において、大腿骨頸部骨折は増加の一途をたどっており、転倒をきっかけとして骨折が生じその後寝たきりになってしまう方も少なくありません。日本では年間約10万人が受傷しており、女性に多いとも報告されています。大腿骨頸部骨折を発症すると、日常生活に著しい障害を引き起こすことになります。そのため、可能な限り手術的な治療介入を行い、機能回復を図ることが推奨されます。

原因

 大腿骨は骨盤と股関節を構成します。大腿骨頸部とは、大腿骨のなかでも股関節を形成する側の付け根に当たる部分です。股関節は、可動性・安定性を高めるために関節包で強化されています。

 大腿骨頸部骨折とは、骨折が関節包の外で生じたのか内部で生じたのかに応じて区別され、関節包の内部における骨折のことを大腿骨頸部骨折と呼びます。一方、関節包の外側で頸部骨折を起こすこともありますが、この場合は、大腿骨転子部骨折と呼びます。大腿骨転子部骨折は欧米では、区別されていますが大腿骨頚部骨折として扱われることもあります。
 関節包の内外で骨に対する血液供給量に差があるため、このように分類されています。関節包の外側は血流がよいのですが、内側は血流が乏しいです。この血流量の差は、そのまま骨折の治りやすさにも影響を与えることが知られており、血流の乏しい関節包内の骨折である大腿骨頸部骨折ではなかなか骨が治りません。逆に血流が豊富な関節包外の骨折である大腿骨転子部骨折では骨が癒合しやすいです。

 大腿骨頸部骨折は、骨がもろくなっていることが基盤として骨折が発症します。骨がもろくなる要因として代表的なのは、骨粗鬆症です。そのほかにも、糖尿病、腎機能低下、喫煙、加齢、未産などもリスク因子として挙げられます。特に女性において骨密度が低下影響を受けやすく、転倒をきっかけとして骨折が発症します。しかし、明らかな外傷がなくとも大腿骨頸部骨折は発症することも知られています。

症状

 大腿骨頸部骨折を発症すると、股関節周囲(鼠径部)の痛みなどを認めるようになり、歩行や起立困難になります。大腿骨転子部骨折の場合は、骨折に伴う皮下出血が殿部などに生じます。大腿骨頸部骨折は高齢者に生じることが多いということもあり、認知症の方に発症することもあります。そのため、骨折していても症状の訴えが乏しいこともあります。

検査・診断

 大腿骨頸部骨折の診断では、レントゲン写真、CT、MRIといった画像検査が重要になります。レントゲン写真はより簡便に撮影することが可能であり、第一スクリーニングとしては有用です。骨折部のずれの評価にはCTを用います。MRIはレントゲン写真では明らかでない場合に撮影されることがあります。

 

治療

 大腿骨頸部骨折を発症すると日常生活にて、制限が著しく制限される可能性が高いです。そのため基本的には手術での治療を優先されます。

 手術方法としては、骨接合術と人工骨頭置換術に大きく分けることができます。

 手術方法の選択については、年齢や普段の活動度、骨折の重症度、認知症の有無などを考慮して選択されます。人工物には老朽にともなう再手術の必要性が伴うデメリットもあるため、術後の生命予後を考慮することも求められます。

リハビリテーション

 

 大腿骨頸部骨折では、上記しましたが手術を治療として選択されます。そのため術後のリハビリも重要です。手術方法によってリハビリ内容は、少し変わります。

 人工骨頭置換術では早期に荷重訓練を行い疼痛に応じて歩行訓練なども早期に行われます。

 骨接合術でも早期に荷重を行いますが、骨粗鬆症の状況や骨折の転移の具合などによって主治医の指示が変わるため時期にずれが生じます。

 上記の違い以外は関節可動域運動や筋力運動、転倒予防のバランス訓練などを実施します。高齢者では骨折、手術後に長期臥床の状況になると、急速な速度で活動度が低下します。なかには認知症の進行がみられることもまれではありません。こうしたことを防ぐためにも、適切なタイミングで活動度を上げる努力も必要です。

最後に

 おかだ整形外科では手術後のリハビリテーションも実施しております。

手術後に日常生活をある程度獲得された患者様の中でも、日常生活で困っている方は一度相談に来られてください。

理学療法士 牧 将平