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後十字靭帯損傷、断裂について

2022/12/25

概要

 後十字靱帯とは、膝を支えている重要な4つの靭帯のうちの1つです。長さが約40mm、幅が15mmで太さは前十字靭帯のほぼ2倍と言われています。つまり、非常に強固な靭帯であり後十字靭帯は膝関節において最強かつ最大の靭帯です。そのため後十字靭帯損傷は、前十字靭帯損傷と比べて発生頻度が低く完全断裂より部分断裂となることが多いです。

また、後十字靭帯は大腿骨と脛骨をつないでいる後方の関節内靭帯です。役割は、膝の後方向(後方への亜脱臼防止)や捻りに対して制御する能力を持っています。

後十字靭帯単独損傷がその後の半月板損傷の原因となったり、関節症性変化の進行につながることが報告されています。

原因

 受傷起点として、後十字靱帯損傷は膝関節を曲げた状態(屈曲位)で脛骨前面を強打した場面などで生じます。

つまり、車での交通事故でダッシュボードに膝を強打した場合や転倒して膝を強打した場面で多く見られます。スポーツ外傷としては、アメリカンフットボールやラグビー、柔道などの接触競技や格闘技で発生率が高くなります。そのため男性の方が多いとされています。

 しかし、スポーツによる膝関節の怪我に占める割合は1%程度で、膝関節傷害の中で最も発生割合は低いとされています。(前十字靭帯損傷の発生割合は約45%)

損傷後の不安定感が比較的少ないことも多いため、受傷している事に気がつかない場合もあります。

症状

 損傷しても前十字靭帯に比べて膝関節の不安定が少ないため、炎症(腫れ)などが改善すれば特に支障なく日常生活を送ることは可能です。

しかし断裂した場合、前十字靭帯同様に関節内靭帯のため後十字靭帯は完全に修復することは稀です。修復されたとしても緩んでいたりして正常な形態を保てなくなります。そのため、日常生活で後十字靭帯の緩みにより、大腿骨が前方に移動し半月板などへのストレスが増加します。その結果、膝関節が長期間ストレスに晒されることにより半月板損傷や膝蓋骨(お皿)、膝関節内の軟骨損傷が生じることが指摘されています。

 後十字靭帯損傷を放置することは、将来的に半月板や軟骨損傷を引き起こし疼痛や日常生活の活動性(階段を下るとき)に制限をきたす可能性があります。

また、スポーツ動作で着地したときに膝が崩れるような感覚が起きます。

 

 後十字靭帯損傷をした人を平均13~14年観察した報告では、15年経過で歩行、階段昇降、ランニング、ジャンプで50~80%の人に軽度~中等度の問題が生じており、疼痛は15年で60%の人が深刻な疼痛を生じ、膝折れは40%の人に存在していた。

この後十字靭帯機能不全は問題ではあるが、症状は軽度のことが多いとされます。

検査・診断

 診断の基本は画像検査と徒手検査です。

 徒手検査では診察時に関節内腫脹、靱帯の緩みの確認します。

 画像検査では一般的に、骨折の有無を調べるためにX線検査を行いますが、後十字靱帯はX線で描出することはできません。画像診断としてはMRIが有用であり、その診断率は90%以上とされています。また、MRIは他の靭帯損傷、半月板損傷や関節軟骨の状態も詳しく調べることができるので後十字靱帯損傷の確定診断に適した検査となっています。

 

治療

 後十字靭帯機能不全が存在しても、臨床的愁訴は極めて少ないことがほとんどです。また、前十字靭帯損傷に比べ、二時的な半月板損傷などをきたす可能性が低く、保存治療でも、大腿四頭筋の筋力が回復すれば、高率でスポーツ復帰が可能です。そのため、単独損傷では一般的には第一に保存療法が選択されます。

一方、内側側副靱帯以外の靭帯損傷を合併した場合は、他の損傷靭帯を可及的に修復しますが、修復困難な場合は再建術を行います。再建術の移植腱の処理については前十字靭帯再建術と同様です。

 急性期(損傷直後)は患部の安静を図るため、固定及び免荷をし、関節内に出血があれば穿刺を行う場合があります。関節内の腫脹、疼痛が軽減してきたら専用サポーターを装用し、リハビリテーションで大腿四頭筋の強化と膝関節可動域訓練を行います。疼痛が落ち着き、可動域が回復してから徐々にスポーツを再開していきます。

 

 しかし最近では、上記したように後十字靭帯損傷による一定以上のゆるさを放置すると、軟骨損傷や半月損傷が頻発することがわかってきました。手術手技や手術術式の改良に伴い以前より安定した術後成績が得られるようになってきたため、後十字靭帯再建術が見なおされてきています。

終わりに

 今回は後十字靭帯損傷、断裂について紹介しました。膝関節靭帯の怪我ではあまり聞き慣れな怪我ではあります。また、膝関節の不安定性など生じにくい怪我でもあるため気が付きにくい怪我でもあります。しかし、本来あるべき靭帯が損傷もしくは断裂するという点では膝関節にとって最悪な状況下です。

階段を降りている際に捻った、交通事故の後から膝の状態が変などの受傷起点がある方はすぐに相談に来てください。

私たち神戸の整形外科 おかだ整形外科は真摯に向き合い治療しています。

 

理学療法士 牧 将平