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膝関節内側側副靭帯損傷について

2023/01/15

概要

 膝内側側副靭帯(medial collateral ligament:MCL)損傷とは、膝の靭帯損傷の中でも頻度の高い外傷であり、その多くがスポーツ動作中に発症します。

 適切な治療をせずに放置した場合は、半月板損傷など他の傷害を合併する可能性が高くなります。

内側側副靭帯とは

 内側側副靭帯とは大腿骨内側上顆または内側上顆の後方から脛骨内側を走行する浅層と深層、後斜靱帯の3層構造となっており長さ10cm、幅3cmの範囲の大きさです。

 内側側副靭帯の損傷は浅層の損傷が一般的であり、単独損傷であれば通常は保存療法が選択されることが多いです。保存療法後に不安定性をきたすことは稀であり、良好な経過をたどることが多いです。

原因

 内側側副靭帯損傷はスポーツ膝外傷の中で頻度の高いものの1つです。

受傷起点としては接触型と非接触型の2パターンあります。

接触型

柔道やラグビー、アメリカンフットボール、アイスホッケーなどのコンタクトスポーツにおいて、大腿や膝関節の外側から直接外力が加わることにより生じます。

 

非接触型

サッカーやスキーなどのスポーツにおいてジャンプ動作やターン動作、ストップ動作により生じます。

症状

 損傷部位はMCLの大腿骨起始部付近(膝の内側やや上の部分)が多いです。

初見では、膝内側の腫脹や皮下出血、損傷部位に限局した圧痛、膝を外反する(外反ストレステスト)と激痛の訴え、膝内側の不安定性を確認できます。

検査・診断

 膝内側側副靭帯の検査はレントゲンを撮影しますが、レントゲンでは靭帯は写らないので骨折の有無の確認が目的です。

 損傷の靭帯の診断はMRI検査が最も有用でMCL損傷のみならず前十字靭帯損傷や半月板損傷など他組織との合併がないかの確認をします。

また、医師による徒手検査も実施されます。

内側側副靭帯損傷には外反ストレステストといって、膝の外側より内側にストレスを加えて膝関節の動揺を見ます。膝が軽度曲った状態(屈曲30°)、伸びた状態(完全伸展)の2パターンで実施します。

 受傷状況などの問診や徒手検査(下記分類で判断)、画像診断を総合的に判断し治療方針を決定します。

Fetto&Marshallに基づく分類

・GradeⅠ:内側側副靭帯の疼痛のみ、外反ストレステスト0°、30°ともに陰性

・GradeⅡ:外反ストレステスト0°陰性、外反ストレステスト30°陽性

・GradeⅢ:外反ストレステスト0°、30°ともに陽性 ⇒ 手術適応

 

American Medical Associationに基づく分類

・1度:小範囲の繊維の損傷で不安定性を認めないもの

・2度:軽・中等度の不安定性を認めるが完全断裂には至らないもの

・3度:完全断裂

治療

 治療方針としては、Ⅰ度損傷またはⅡ度損傷の場合は通常、装具療法やリハビリテーション、物理療法での保存療法が行われます。Ⅲ度損傷の場合は、損傷部位と合併損傷に応じて治療方針を決定します。内側側副靭帯の大腿骨側(膝関節内側上部)の損傷であれば、Ⅰ度またはⅡ度損傷と同様に保存療法を行います。脛骨側付着部(膝関節内側下部)からの引き抜き損傷や合併損傷(前後十字靱帯損傷、内・外側半月板損傷)がある場合には手術療法を考慮します。

 前十字靭帯損傷+内側側副靭帯損傷+内側半月板の損傷合併例をUnhappy trias(不幸の三徴)ともいいます。Ⅲ度の内側側副靭帯単独損傷の場合、23%で再受傷するとも言われています。

内側側副靭帯損傷のリハビリテーションの流れ

 内側側副靱帯損傷におけるリハビリテーションは急性期、回復期、トレーニング期と大きく3期に分けられます。急性期は腫脹(腫れ)の管理と靭帯の治癒促進、回復期は可動域の再獲得、トレーニング期は可動域の維持と筋力の強化が目標になります。

 Ⅰ、Ⅱ度損傷

 

 原則的に保存療法が選択されます。

内側側副靱帯は血流が豊富で自己修復能力が高く、損傷部には周囲から線維芽細胞(修復の際に線維の素となる細胞)が血管とともに進入し治癒組織が形成されますが、一方で癒着などで可動域制限の原因にもなりやすいですそのため、安静や固定などの不動よりも、むしろ受傷後早期から無理のない範囲で生理的な膝関節運動の獲得を図る運動療法が推奨されています。

 状態にもよりますが、受傷後2週までを急性期から回復期、2週から5週までをトレーニング期、3週から6週以降を復帰期と考えます。

 Ⅲ度損傷

 

 単独損傷では保存療法が選択されます。一方、広範囲損傷では修復術、靭帯損傷の合併例では修復術と靭帯再建術が選択され、内側側副靱帯損傷の陳旧例(過去に受傷した例)では再建術が選択されます。

 受傷後2週までを急性期、6週までを回復期、8週から10週までをトレーニング期、2ヶ月以降を復帰期と考えます。

 装具装着期間

 

 Ⅱ、Ⅲ度損傷では靭帯治癒促進のために膝外反(膝が内に入ること)を制動する装具を装着します。Ⅱ度損傷では約3週間、Ⅲ度損傷では約6週間装着します。

終わりに

 今回は膝関節内側側副靱帯損傷について紹介しました。

膝関節の怪我では前十字靭帯損傷や半月板損傷と同じくらいの頻度で生じる怪我です。

ただこの2つの怪我よりも予後は悪くありません。違和感があればすぐにご相談ください。

早期治療を行えば、しっかりと日常生活やスポーツ活動を行えます。

私たち神戸の整形外科 おかだ整形外科は真摯に向き合い治療しています。

 

理学療法士 牧 将平