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肉離れについて

2023/02/27

概要

 肉離れとは、スポーツ動作中に発症する筋損傷で、明らかな直達外力による筋打撲症を除いたものの総称であると言われています。つまり、筋肉が断裂する怪我です。大腿(太もも)や下腿(ふくらはぎ)などの筋肉が切れたり、裂けたりすることによって炎症を起こし、患部が腫れ、激しい痛みを感じます。部分的に断裂することが多いのですが、まれに筋肉が完全に断裂してしまうこともあります。

  成長期のお子さん達には、筋肉と骨の付着部に牽引ストレスがかかり剥離骨折を起こすこともあります。

原因と病態

 肉離れは、急なダッシュやジャンプなど、急激に筋肉への負荷がかかってしまう動作に筋肉が対応できない場合に起こります。瞬発的に強い負荷がかかり、その負荷に筋肉が耐えられなくなった際に、筋肉の一部が切れたり、裂けてしまったりするのです。スポーツをしている時に限らず、筋肉が疲れていたり、弱っていたりすると、ちょっとした運動や日常の何気ない動作でも、肉離れになることがあります。

要因としては、下記の内容が考えられます。

 

①筋肉の柔軟性の低下 

②疲労 

③筋力の不足や不均衡(左右差、拮抗筋同士の筋力比が高すぎるor低すぎる) 

④不適切なウォーミングアップ 

⑤肉離れの既往 

⑥身体のアライメント(骨盤の過度な前傾など) 

⑦動作のフォーム 

 最も典型的な肉離れの例は、疾走中に起こるハムストリングの肉離れです。

他の例ではサッカーや野球の切り返し動作やステップ動作、フェンシングやバドミントンなどで前方に踏み出した足がスリップしたり、格闘技で押しつぶされ開脚強制された場合はハムストリングが強烈にストレッチされて、付着部の損傷を起こしやすいです。

 上肢では、バスケットボールでのシュート動作時の上腕三頭筋や投球時の肩甲下筋などです。柔道やレスリングでは大胸筋断裂も起こることもあります。

 体幹ではテニスのサーブやバレーボールでのスパイク動作時、体操競技のひねり技中に起こる腹直筋の肉離れが代表例です。

 下肢では上記したハムストリングのほか、サッカーの動作時の大腿直筋、フェンシングのファント動作時の内転筋群、テニスやバドミントンの切り返し時の腓腹筋内側頭、長距離走におけるヒラメ筋などがあります。

発症メカニズム(ハムストリング肉離れを例として)

  • スプリング型(下図-左)

 強力な大腿四頭筋の働きで振り出された脚が、接地動作に切り替わる際のブレーキ動作

(振り戻し動作)としてハムストリングを収縮させた際に発症します。

 

  • ストレッチ型(下図-右)

 接地時に膝伸展位でハムストリングが収縮している状態で、地面からの反力によって

(体幹が前屈し)股関節が受動的に屈曲されるとハムストリングの遠心性収縮が余儀なくされて発症します。

 

症状

 押したときの痛み(圧痛)が強く、腫れは比較的軽度であることが多いです。内出血を起こすこともあります。また、痛めた筋肉に抵抗を与えて収縮させたときの痛み(収縮時痛)と、ストレッチした際の痛み(ストレッチ痛)、動きの制限(可動域制限)が特徴的です。

検査・診断

 病院では、エコー(超音波検査)、CT(コンピュータ断層撮影)、レントゲンなどの画像検査などによって、鑑別診断(症状を引き起こす疾患を絞り込むために行う診断)を行います。肉離れなのか、剥離骨折なのか、また同じ肉離れでも重傷なのか、軽傷なのかといった判断をしてから、症状に合わせた処置をしていきます。

肉ばなれは以下のように区分されます。

 

・損傷タイプ分類

タイプⅠ型:筋線維部・筋周膜に損傷があるもの

タイプⅡ型:筋腱部・筋腱移行部に損傷があるもの

タイプⅢ型:筋腱付着部から腱性部に損傷があるもの

 

・損傷度分類

グレード1(軽症):わずかな筋繊維の損傷(高信号領域のみ)

グレード2(中等症):1度より大きい部分断裂

グレード3(重症):完全断裂

また下記図のような方法で簡易的にも判断できます。

治療

 ほとんどの肉離れは保存的治療を選択されますが重症型では手術適応となることがあリます。

 

・タイプⅠ型

 Ⅰ型の肉離れは歩行が可能な場合がほとんどです。下記の応急処置を行い、ストレッチの際の痛みや患部を押したときの痛み、筋収縮の際の痛みを指標に保存療法で治癒します。ストレッチ痛が消失したら徐々にストレッチを開始し1~2週間程度でランニングを開始でき。その後順調に復帰できる例がほとんどです。競技復帰目安は2週です。

 

・タイプⅡ型 

 肉離れの治療は、安静と固定が基本となります。肉離れというのは「本来ひとつにまとまっていた筋繊維が無理な力がかかったせいで部分断裂した状態」です。つまり、基本的には切り傷や裂傷と同じです。切り傷が出来た場合は、そのまま放置しておくよりも、切れた箇所の皮膚を寄せ合い、固定しておく方が早くくっ付いて治癒していきます。肉離れによって壊れた筋肉の繊維も、固定することで修復します。そのため2〜3週間は患部を固定し、組織の修復を推進するのですが、組織は修復過程で収縮してしまうので、元の組織の状態に戻すには、収縮した組織を引き延ばすことも必要になります。痛みを指標にしながら、ストレッチや筋力トレーニングを行います。痛みが引いてくる2週程度の早期にランニングを開始しリハビリ強度を上げていくと、復帰までの過程で再受傷する例も多いです。画像診断を参考にランニング開始まで4〜6週の期間をかけたほうが安全であると考えます。行競技復帰には6〜8週間を要します。

 

・タイプⅢ型

 腱断裂の場合はランニング開始まで5〜6ヶ月程度の期間を要し、その後ランニング時にも違和感を残したり、十分な筋力発揮ができなくなってしまうこともあり、受傷後早期に縫合術などの手術的加療も考慮する必要があります。

肉ばなれになったときの応急処置

では、肉離れになってしまった時には、どのような応急処置をしたらいいのでしょうか。病院に行くまでに大切なのは、次の3つの行動です。

 

1.すぐに冷やす。ただし、冷やしすぎない

 肉離れを起こした直後は、歩行を控え、直ちに冷やすことが大切です。水に濡れたタオルでいいので、すぐにアイシングしましょう。ただし、冷やしすぎないことが大事です。アイシングには内出血の拡大を防ぐ効果がありますが、冷やしすぎると筋肉が固くなり、回復に必要な血行を悪くしてしまいます。冷やしすぎて痛くないことを目安として、長くても30分程度にしてください。

 

2.膝を軽く曲げ、足を上げる

 病院に行くまでは、膝を軽く曲げ、ソファやクッションなどを使って、下肢挙上(足を高く持ち上げた姿勢)にしておくと、痛みが和らぐことが多いです。患部を心臓よりも高い位置に上げておくと、肉離れの膨張(腫れ)を防止したり、軽減させる効果があるのです。こうした姿勢で待機し、移動の準備が整い次第、できるだけ早く病院に向かいましょう。

 

3.移動時は、患側に体重をかけない

 肉離れになってしまったら、患側(けがをした側)に体重をかけないことがとても重要です。移動する際は、誰かに肩を貸してもらったり、おぶったりしてもらえると理想的です。それができない場合は、ケンケンでも構いません。病院に向かう時は、くれぐれも患側に体重を乗せないように気をつけて移動しましょう。

終わりに

 今回は、肉離れについて記載しました。肉離れはスポーツレベルが高いほど再受傷率が高い疾患(怪我)です。特にハムストリングの肉離れは高いです。

しっかりと怪我に向き合い治療していきましょう。

私たち神戸の整形外科 おかだ整形外科は真摯に向き合い治療しています。

 

理学療法士 牧 将平