手根管症候群について
2023/09/03
概要
手根管症候群とは、指先の感覚や手の運動を支配する正中神経が障害されることによって、しびれや痛みなどの症状をきたす病気です。手関節には手根管というトンネル様の部分があり正中神経や腱などが通っています。
様々な原因によって正中神経が圧迫されると症状が誘発されます。末梢神経障害の中で最も多く、日常よく遭遇する病気です。
要因
手根管症候群は、正中神経が圧迫されることで手のひらの感覚や運動が障害されます。正中神経は母指(親指)から環指(薬指)の母指側の感覚、母指の動きなどを支配する神経です。
正中神経が圧迫される原因には、手関節の動きを繰り返すことがストレスとなり、手根管の中で炎症を起こすことが要因と考えられています。
手根管症候群は原因不明、つまり特発性で出現することが多いです。つまり、手関節の運動と関係なく手根管が狭くなり、手根管症候群を発症することがあります。
妊娠・出産期や更年期の女性が多く生じるのが特徴です。その他に骨折などや仕事、スポーツなどで手の使いすぎな人などに生じます。
また、人工透析を長期間受けている人は、体内にアミロイドと呼ばれる物質が蓄積します。このアミロイドが手根管に沈着すると正中神経が圧迫され、手根管症候群を発症することがあります。関節リウマチなどの炎症性疾患では、炎症で腫れた滑膜により正中神経が圧迫されます。さらに、正中神経そのものが障害を受けることで手根管症候群を発症することがあります。この原因として代表的なものは糖尿病です。腫瘍や腫瘤などの出来物でも手根管症候群になることがあります。
症状
手根管症候群では、初期には正中神経がつかさどっている小指以外の指先に痺れを感じます。特に示指(人差し指)、中指が痺れ、痛みがでます。最終的には母指(親指)から環指(薬指)の母指側の3本半の指がしびれます。急性期には、明け方に強く目を覚ますと手が痺れ、痛みます。理由としては痺れや痛みが就寝中に手根管の内側で腱の膜にむくみが生じて明け方に痛みが発生することが特徴です。また、自転車や車の運転、編物など手を使うことで強くなりやすく、手を振ると少し楽になるのも特徴です。
正中神経は感覚神経のみならず運動神経の機能も有しているため、手根管症候群が進行すると物を掴んだり、摘む機能や対立運動が難しくなります。状態が悪化すると、母指の付け根(母指球)がやせて母指と示指できれいな丸(OKサイン)ができなくなります。
検査・診断
手根管症候群が疑われる場合、Tinel(ティネル)サインとPhalen(ファーレン)テストという検査が行われます。
・Tinel(ティネル)サイン
手関節の掌側(手のひら側)を叩くとしびれ、痛みが指先に響きます。これをが陽性となります。
・Phalen(ファーレン)テスト
体の前で両手の甲を合わせて1分間その状態を保ちます。その間にしびれを感じたり、そのしびれ感が強くなったりする場合に手根管症候群が疑われます。
手根管症候群の診断にて神経伝導検査が行われることもあります。神経伝導検査では、手根管症候群で障害を受ける正中神経の分布領域に一致して、神経の伝導速度が遅くなっていることを確認します。
手根管部位に対する画像検査として、手根管部位のMRIやエコーが撮影されることもあります。画像検査を行うことで他の病気との鑑別が可能となるメリットがあります。
治療
治療としては、保存的な治療と手術に分けることができます。
手関節(手根管部)へのストレスが要因であることが多いため、治療方法として装具による手関節の固定を行います。自転車のハンドルを握るような手首を返す(背屈)姿勢を長時間続けると神経が圧迫されるため、このような動作を避けることも大切です。
軽症の場合は、こういった姿勢を避けることと消炎鎮痛剤やビタミンB12などの飲み薬、塗布薬にて炎症が治まる可能性があります。しかし、1〜2か月のうちに改善がみられない場合は次のステップに進む必要があります。次のステップとして、注射による薬物治療です。これは手根管の中にステロイド薬を直接注射する治療です。多くの人は1~数回のステロイド注射と手首の安静で症状が治まります。
再発を繰り返す場合、あるいは症状が続き進行している場合(母指球筋のやせたものなど)には手術も検討します。手根管症候群の手術は、以前は手掌から前腕にかけての大きな皮膚切開を用いた手術を行っていましたが、内視鏡を用いた鏡視下手根管開放術や小さく切開して行う直視下手根管開放術があります。
終わりに
以上が手根管症候群についてです。
女性に多い疾患です。違和感が生じたらすぐに受診しましょう。
私たち神戸市東灘区の整形外科、おかだ整形外科は真摯に向き合い治療しています。
理学療法士 牧 将平