骨粗鬆症について

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骨粗鬆症について

2023/10/15

概要

 骨粗鬆症とは、骨量が減少し骨が弱くなり、骨折しやすくなる病気です。

骨は、骨細胞を破壊する細胞と吸収する細胞があります。この代謝バランスによって骨の強度を維持しています。

しかし、骨粗鬆症は骨代謝バランスが崩れてしまい、骨形成よりも骨破壊が上回る状態が続き骨がもろくなった状態のことです。
 骨粗鬆症と診断される方は男性300万人、女性980万人、計1280万人と推定されています。現在の高齢化社会に伴い年々増加しているのが現状です。

骨粗鬆症とは

 骨粗鬆症は、圧倒的に女性に多いです。要因としては、閉経に伴う女性ホルモン(エストロゲン)の減少が骨の代謝に影響していると考えられます。60歳代では2人に1人、70歳以上になると10人に7人が骨粗鬆症になると言われています。その他の要因としては、偏食や極端なダイエット、喫煙や過度の飲酒、生活習慣なども骨粗鬆症の要因として考えられます(原発性骨粗鬆症)。また、内服薬(ステロイド製剤など)、年齢や遺伝的な体質なども要因とされます(続発性骨粗鬆症)。
骨粗鬆症により、わずかな外力(尻もちや手を付いてしまうなど)で生じる骨折を脆弱性骨折と言い、合併症として問題とされています。骨粗鬆症による骨折は「寝たきり」につながります。介護が必要になった主な原因の約10%が骨折・転倒によるものです。

要因

 骨が脆くなる原因は何でしょうか。骨粗鬆症は「骨の新陳代謝のバランス(破壊と吸収)が乱れて、骨密度が低下するため」といえます。

骨の役目は、体を支えること以外にも「血液中のカルシウムやリン酸を一定にするための貯蔵庫」という役割があります。

体に必要なカルシウムの99%は骨で貯蔵されており、たった1%が血液中で循環しています。

「カルシウム=骨」という印象が強いですが、カルシウムイオンは神経をはじめ全身のバランスを保つ大切なミネラルの1つ。血液中のカルシウムが低下すると、神経症状をはじめ様々な全身症状が現れます。そのため、血中カルシウム量が不足すると、骨で貯蔵されたカルシウムが溶け出し不足を補います。結果的に骨のカルシウム量が減り骨密度が低下します。さらに「骨に含まれるコラーゲンやたんぱく質の強さの低下」も骨粗鬆症につながります。

主な要因は3つあります。

①加齢による骨密度の減少

 骨密度は男女ともに年齢が進むにつれ、20歳をピークに減少していきます。

 特に女性の方が減少が大きく、閉経を迎える50歳ごろから骨密度の減少は加速します。

 その理由としては…

 

・腸管でのカルシウムの吸収が低下するため

・カルシウムの吸収を助けるビタミンの働きが弱くなるため

・女性ホルモン(骨吸収の働きを弱める作用がある)の分泌が低下するため

・運動量の低下による骨への刺激が低下するため

 

 などがあげられます。加齢による影響は仕方ない部分もありますが、若い頃から生活習慣に気を配ることで、ある程度骨密度の減少を抑えることができます。

②生活習慣による骨密度の低下

 骨粗鬆症=ご高齢の病気というイメージが強いですが、長年の生活習慣による「若年性骨粗鬆症」も問題となっています。

 

・運動不足:骨への刺激がなく骨形成されづらくなります

・カルシウム・マグネシウム・ビタミンD・ビタミンK不足:骨を作る栄養素がないと骨形成が促されません。

・日光を浴びていない:日光はビタミンDを活性化させるのに必要です。

・塩分の取りすぎ:腎臓にて塩分(ナトリウム)を排泄するときにカルシウム量の排泄が大きくなります

・無理なダイエット

・喫煙

・アルコール、カフェインのとりすぎ

 

③続発性骨粗鬆症

 

・生活習慣病:糖尿病、慢性腎臓病、慢性閉塞性肺疾患など

・栄養不良:胃切除後、吸収不良症候群、低栄養など

・内分泌障害:副甲状腺機能亢進症、甲状腺機能亢進症、クッシング症候群

・自己免疫性:関節リウマチ

・薬物:ステロイド、抗てんかん薬、ワーファリン、ヘパリンなど

症状

 骨粗鬆症は痛みなどの自覚症状がありません。そのため一番怖いところは、骨折したことを機に発見し診断されることが多くあります。

骨粗鬆症を要因として生じる骨折で高齢者の4大骨折があります。腰椎圧迫骨折、大腿骨頸部骨折、橈骨遠位端骨折、上腕骨近位端骨折の4つです。

 腰椎圧迫骨折の場合、日常生活で骨折を生じていても腰痛として放置してしまうこともあり注意が必要です。

また、大腿骨頚部骨折で寝たきりになってしまい、要介護状態になる方も多く社会問題にもなっています。つまり、骨粗鬆症を要因として脆弱性骨折(4大骨折など)を患ってしまうと健康寿命が短くなります。骨粗鬆症の自覚症状はありませんが、下記症状は疑わしい所見です。

 

・最近、背中が丸くなってきた気がする。

・年々、身長が縮む

・背中(腰痛)が顕著に見られる

・起立時に腰痛が生じる

検査・診断

 診断はX線(レントゲン)検査にて可能です。

骨の量や成分(骨密度)を測定するためには、デキサ法(2重エネルギーX線吸収法)、超音波法、MD法、CT法といった詳しい検査があります。

当院とではデキサ法(2重エネルギーX線吸収法)採用しています。

 

骨粗鬆症の診断は、若年成人(20~44歳)の骨量の平均値(YAM値)との比較によって判断します。
骨量が、

・YAM値の70%未満で骨粗鬆症

・YAM値の70~80%で骨量減少

と診断されます。
また脆弱性骨折のうち、大腿骨近位部骨折や椎体骨折を呈した時点で骨粗鬆症と診断され、治療が必要になる場合があります。

治療

 骨粗鬆症の治療は生活指導(運動など)と薬物療法の2本柱です。加齢による変化も大きく、薬物治療を行いながら生活指導(食事や運動など)をしていくことになります。

薬物治療で使われる薬は大きく2つに分けられます。

・薬物療法

 

①骨吸収抑制薬

 

・ビスフォスフォネート製剤:過剰な骨吸収を抑え骨密度を増やす薬剤。

・抗RANKL抗体:骨吸収を強力に抑えます。半年に1回、皮下注射する薬剤。

・選択的エストロゲン受容体作用薬:骨など体の特定部位のみでエストロゲン様作用として働きます。

 

②骨形成促進薬

 

・活性型ビタミンD3製剤:骨形成と骨吸収のバランスを調整し、カルシウムの吸収を高めます。

・ビタミンK2製剤:骨形成を促進し骨折の予防効果があります。

・副甲状腺ホルモン剤:骨形成を強力に促進します。皮下注射の薬剤で1日1回と週1回のタイプがあります。

・カルシウム製剤:カルシウム不足の方が長期間服用することにより、骨密度が増加します。

 

・生活指導

 

 飲酒、喫煙なども控えることがいいと考えられます。

アルコールには利尿作用があり、カルシウムも一緒に排出されてしまい、その上、腸でのカルシウムの吸収も妨げてしまいます。喫煙によって腸の働きを抑え、カルシウムの吸収を妨げます。特に女性の喫煙は骨粗鬆症に大きく影響している女性ホルモンの分泌を減少させてしまいます。

 食事では骨の中心的な栄養素としてのカルシウム摂取は大切です。日本人の食事摂取基準(2020年版)では、成人1人1日当たりの推奨量を、男性で700mgから800mg、女性で650mgと設定されています。下記にカルシウムの多い代表的な食材を示します。
 転倒による骨折を防ぐためには、自宅内の整理整頓も重要です。高齢者の転倒は屋外や民間施設などでなく、大半が自宅内で起こっていると言われています。居住スペースには絨毯やコンセント、階段など転倒の危険性が高い場所がたくさんあります。転倒リスクを減らした環境で生活することが大切です。

骨粗鬆症予防のために行う運動の目的は、「丈夫な骨づくり」「筋力強化」「バランス改善」と言えます。スクワットや踵上げ運動、屋外でのウォーキングなどを行うことで、骨に適度な圧力が加わり、骨が強くなります。また、運動により血液の流れが良くなることで、骨形成が活発になります。筋力を鍛え、転倒しにくくなり、骨折の予防につながります。
自分のペースで無理なく運動を継続し、「丈夫な折れにくい骨」「転倒しにくい体」を作りましょう。

 

※カルシウムの多い食材

 

・野菜

 小松菜、チンゲンサイなど

 

・乳製品

 牛乳、ヨーグルトなど

 

・魚介類

 ししゃも、ちりめんじゃこなど

以上が骨粗鬆症についてです。

骨粗鬆症の怖い部分は自覚症状がなく進行していることです。

骨粗鬆症を要因とする骨折は本当に多いです。当院では検査、治療を実施しています。

気になる点や質問などがある場合は、ぜひ受診してみてください。

私たち神戸市東灘区の整形外科、おかだ整形外科は真摯に向き合い治療しています。

 

理学療法士 牧 将平